ガバナーメッセージ
「職業奉仕月間」に寄せて
2000〜2001年度 | 関口 隆 |
国際ロータリー第2840地区ガバナー |
「職業奉仕とは何でしょうか」と多くの人に訊かれる。手続要覧の職業奉仕の項をみると細かく解説されている。しかし、これを全部読んで、さて、職業奉仕の内容を具体的に云ってごらんと云われても出て来ない。 ロータリーから離れて、日本の陽明学者 安岡正篤先生や経済学者であり理想主義者である河合栄治郎先生の文章によると「職業は先ず己れ及び家族が生計を立てるに十分な利潤を得るためのものであり、尚それだけでなく、その職業を通じて世のため人のために盡くすことが出来る。だから、職業は神聖なものであり、自ら之を大切にするべきものだ」とある。 前原勝樹 著「ロータリー入門書」には「職業とは一応生活の糧を得るための利潤の追求を目的とします。しかし職業は実は人間が社会生活を営むために必要な業務を分担することであり、その報酬として利潤が与えられるのです。そこで当然のこととして責任と誇りが生まれてきます。職業奉仕の理念は正にここにあるのです。ロータリアンは全部職業人ですから、職業奉仕こそはロータリアンの基本的生活態度であるといえましょう」とある。 以上のことから職業奉仕は何を指すのかと考えてみると「職業奉仕は職業を通じて社会に奉仕するものである」と定義してよさそうである。この基本的概念を脳裡にしっかり刻みこんでおかないと、このあといろいろと出てくるので何が何だか分からなくなってくる。 然らば以上の職業奉仕の理念を日常、どのような態度で具現出来るのか。松下幸之助 氏の商売戦術三十ヶ条の中から幾つか引用紹介してご参考に供したいと思う。 第一条 商売は世のため人のための奉仕にして利益はその当然の報酬なり 十一条 無理に売るな 客の好むものも売るな 客のためになるものを売れ 十五条 良き品を売ることは善なり 良き品を広告して多く売ることは更に善なり 二十三条 正札を守れ!値引きはかえって気持ちを悪くするくらいが落ちだ 「ロータリー入門書」には「従来職業奉仕は会員個人が行なうものとされてきましたが1987年のRI理事会は『職業奉仕はクラブと会員双方の責務である』と声明しました。そしてクラブの役割はロータリーの綱領をクラブの活動に適用して模範を示し、更に会員が各自の職業的能力をもって寄与出来るプロジェクトを開発して奉仕を推進、奨励することにあるとされました。すなわち職業奉仕委員会は会員に職業奉仕をして貰うための指導激励の機関なのです」とある。 上記の解説はロータリー特有の難解な文章であり、読んでいるうちに、職業奉仕とは一体何だったのかと不安感にとらわれる方も居られると思う。私なりに別な表現の仕方に変えてみると、「職業奉仕はクラブも会員もそれぞれが行うべきものである。そしてクラブの役割は会員が職業奉仕を行なえるように指導やら激励やらをすることである」となる。クラブの行う活動の内容は、ロータリー入門書によれば「会員の職業関係のスピーチを企劃し、事業上の成功法、苦労話を聴く。また業界の専門家や成功者の講話を伺う。更には優良事業所の見学、出来ればそこを会場としての例会開催、時には国際ロータリーから出ている職業奉仕関係資料を活用して、職業奉仕フォーラムを行う等が挙げられます」ということである。 これだけ云われると、職業奉仕の内容が拡大され、焦点がぼけてくる。 ところで、これ迄の各ロータリークラブの活動内容をみると上記のものが大部分である。一般の会員も職業奉仕とはこういうことをするものだと考えておられるかもしれない。だが、職業奉仕は職業を通じて社会に奉仕することであるという基本的な考え方からすれば、上記の活動内容は、職業奉仕をやり易いように傍らからお手伝いするということで謂わば間接的な職業奉仕活動であると云えよう。 以上、いろいろ申し上げましたが、職業奉仕は職業を通じて社会に奉仕するものであるという基本的概念は不変であります。ロータリアンに於かれましては職業の意義を正しく理解し、己れの職業に責任と誇りを持って活動されますよう祈念申し上げます。 |
[INDEX] | [TOP] |