識字率向上月間に寄せる
国際ロータリー 研修リーダー 重田 政信
パストガバナー

 1997年のRI理事会で、7月が識字率向上月間に指定されました。デブリンR I会長も、彼の創設した実行グループの中に、識字率向上グループを加えています。 今や、識字率向上運動は、ポリオ・プラス計画の後を継ぐRIの重要なプログラムで あると考えられるに至り、2005年までのRI強調事項となりました。
 現在の文明社会において、文字文化から隔絶されて生活するということは、社会か ら置き去りにされることを意味します。非識字者(昔の文盲)は正当な職に就けず、 それに帰因する貧困は更にその子供たちの就学の機会を奪い、途上国において非識字 (イリテラシー)と貧困は悲惨な悪循環を生み出しています。
 世界には約10億の非識字者がいます。日本人の我々には想像できない数字であり ますが、これは15歳以上の大人の1/4に当たります。その3/4はアジア人であ るといわれ、また非識字者の2/3は女性であります。
 一方、世界で1億3千万の就学年齢児が学校に行けません。問題は、ユネスコや我 々の努力にも拘わらず、この数が今世紀末までに10%増加すると予想されているこ とです。途上国の子どもが増え続けているので、学校に行けない子どもが年々増加す る恐れがあります。また、折角入学した子供も1/3は小学校を卒業していません。 このままでは南北間の貧富の差は益々広がり、地球規模の社会不安は一層増大するで しょう。これは我々に強い危機感を与えます。
 先進国ではメディア・イリテラシー(メディア音痴)という言葉さえ聞かれます。 これはインターネットを始めとする情報技術に乗り遅れることを意味し、メディア音 痴の人は、メディアを使いこなす人に大きな差をつけられることを覚悟しなければな りません。こうした情報化社会の時代に、文字さえ知らないということは何を意味す るでしょうか? このままでは、世界人口の1/5に過ぎない先進国の情報技術が益 々進歩し、南北国家間の文明格差は増すばかりでありましょう。
 現在、世界の人口は60億に達しました。更に年間約1億人、即ち毎年メキシコの 人口に匹敵する人口増加を続けています。このまま人口が増え続ければ、我々地球は 生き延びられません。しかも人口増加の99%は途上国の人口であります。我々は折 角予防接種で救った子どもたちを飢え死にさせてはなりません。また彼らに生き甲斐 を持たせる教育と職業を与えなければなりません。
 人口増加抑制の最大のポイントは親の教育であります。途上国の少女が中等教育を 受けるだけで出生率が低下し、先進国並になることが知られています。従って、教育 、特に女性教育こそ、我々宇宙船地球号が生き延びてゆく上での最も効果的な手段で あると言えましょう。
 一方、日本国内問題に目を転ずると、在日外国人子女の識字問題は、これまでロー タリーでは余り問題にされて来なかったように思われます。在日外国人の子供たちは 、言葉の問題のため、予防接種や、乳幼児健診などの公的サービスの恩恵を十分には 受けられない恐れがありますが、そうした子供たちは増加の一途を辿って来ました。 少子化、高齢化の日本は、WHOによりますと、近い将来に1千万人の外国人労働者 を必要とするといわれ、長期的に見れば外国人は今後必然的に一層増加せざるを得な いでしょう。
 在日外国人の子女が、予防接種などの公共サービスの恩恵から遠ざかっているとす れば、そこに伝染病が多発する可能性があります。特に結核の集団発生が心配されま す。更に、肉体的な問題だけでなく、そうした子供たちの心の問題があります。即ち 不法滞在を含めた在日外人の子供たちが、今や中学・高校の年齢に達している現況か ら、将来彼等が正当な教育と就職の機会が与えられなければ、犯罪の温床になり得る でありましょう。こうした子供たちに対する支援は、ゆるがせに出来ない人道的問題 であります。
 私たちは、従来ポリオを始めとする予防接種や識字の問題は途上国のことと考えて きましたが、これからの日本のロータリーは、こうした国内の識字問題にも積極的に アプローチすべきであると思われます。
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