会員増強セミナー2003年2月
  今、ロータリーは何故増強拡大なのか
RIMZC 橋 文夫(山形北RC)
  国際ロータリーでは1996年頃から、会員の減少が始まりました。121万3千余のピークから2000年には、118万会員にまで落ち込みました。

 このような背景の中、2001年のシカゴの規定審議会における決議01−658号で、2005年に創立100周年を迎える100年祭までに、150万人の会員目標を承認する決議案が採択されましたことはご承知のとおりであります。
 これを受けて前年度キングRI会長は、「グローバル・クエスト」運動を展開され毎月1クラブ1名の純増を呼びかけられ、2002年5月24日現在、全世界の会員数は、1,235,173名に達しました。 今年度ビチャイ・ラタクルRI会長は、「グローバル・クエスト」は継続実施し、今年度はボトムアップでクラブの活性化を図り、年間1クラブ5名の純増を呼びかけられ、各種会合・行事で強調され強力に実施中であります。

 歴史は繰り返すと申しますが、1930年代も世界的大不況と大戦のハザマで1931年には18クラブが消え、続いて32年には新しいクラブよりも、失ったクラブ数が多くなり、その数27クラブに及び、2千を超える会員を失った記録があります。
 それから70年を経た現在を見ますと、文明・文化の進歩、科学技術の進歩によって物質的には比較にならない豊かさで生活を楽しんでいますが、豊かさゆえの頽廃から心の痛みが増加し心の豊かさが失われて、政治・経済・社会のあらゆる分野で、腐敗・不祥事・モラルの頽廃が続出しております。 特に目立つ企業の不祥事は枚挙に暇が無いほど次々と報じられ、企業を揺るがす大事件として企業倫理が大きく取り上げられています。 法令遵守(コンプライアンス)が企業の命運を決すると言っても過言ではない時代になったのです。

 その一部を考えると、企業が大型化して競争力、管理能力、コストダウン、経営効率、占有率が高まり安定成長に結びつくといわれています。 しかしその反面合併による「リストラ」が平然と行われ、結果的に市場占有率が高まり、競争原理が効せずアメリカのカリフォルニアで起きた電力会社の破綻に見られる社会の混乱、産業の停滞と国民生活を不安に陥れた例もあります。

 きめ細かいサービスが行き届かず顧客の利便性が低下。 市内スーパーの不採算店舗が閉鎖して近所の高齢者所帯が困っている例もあります。
 企業合併で選別排除された中小下請け会社の倒産とか、そして常に企業の統廃合が実施される社会不安、雇用不安が増大し、貧富の格差が拡大し、犯罪の増加、紛争の種が増えます。 「競争こそ進歩を生む」とよく言われますが、現在のような過当競争が良い社会を齎すとは思えません。 かつての日本のよき伝統は、企業においては「終身雇用」に見られる「社員は家族」という経営手法が「戦後50年の驚異的な経済大国を生み、世界の注目を浴びた時期がありましたが、競争と共生が並存する多元的社会こそ今求められていると思っていますし、競争だけでよい社会が出来るとは思いません。 又一極集中より地方分権・分散、地方自治で住みよい社会・国土つくりが叫ばれています。 産業構造の改変も97.3%の中小企業を抱える日本の産業構造は中小企業を抜きしては成り立ちません。又恣意的な規制緩和も不公正の助長を図るのみで、影の官僚統制が社会を暗くするのみだと思います。

 競合の激化は「優勝劣敗」社会が現出し「ロータリーの精神」は抹殺されます。
 最近アメリカの景気後退が注目されてきました。 原因はアメリカ資本主義の構造問題が露呈して、巨大な産業界が信頼を失墜し始めました。 先に「エンロン」最大のエネルギー会社が不良債権隠しで倒産し、グローバル・クロッシング社通信会社が不正経理で破綻し連邦破産法を申請、「ワールドコム」通信会社が粉飾決算で、85,000人の全従業員の内17,000人をリストラして更生法を申請した、と報じています。 オープンで透明化が計られ、フェアーで信頼の置けるはずのアメリカ企業、グローバルで効率的なアメリカ企業のはずが、この様な不祥事がぞくぞくと出てきました。 コンサル業務と会計事務所で世界ビッグ5の「アンダーソン」も不正経理の指導と、不正を見逃した罪で告発され解散の憂き目にあっております。

 こうした背景を考えれば「職業宣言」「四つのテスト」の実践を標榜する「ロータリー」の存在が貴重になり、今社会が求めているのはこのような活動ではないか。まさに出番が到来したと考えられます。
 私たちロータリアンは職業倫理を高め、職業を通して奉仕の理想を鼓吹・育成・実践して、その目的を達成しようと活動を続けている集団でもあります。 今こそ、この意識に共鳴する友人をより多く仲間にする努力は、共鳴のバイブレーションを引き起こし拡大し、組織の強化に繋がりを持たせ、会員の増強を図って世直しのスタートにしなければならない。 これが「グローバル・クエスト」の真意だと思っております。是非皆さんのお力を此処で発揮して、ロータリーの存在感を示して頂きたい。これが私の願いであります。

 翻ってロータリー活動を省みますと、ややもすれば私たちはロータリーの論理を「教条主義的」に固執する愚を犯し勝ちですが、示唆にとんだ言葉を思い出します。
 それは1934年のデトロイド大会で、ハロルド・T・トーマス氏(1959〜60RI会長)が理事会より提案されたある制定案に反対して、「私は、ロータリーの驚くべき成長の主たる原因の一つであり、おそらく現在のロータリーの威力の要となっていると言うものは、その適応性であり、融通性であり、そしてあらゆる儀礼的な堅苦しい形式主義にとらわれない、その性格であると終始確信していた。 言葉の意味のニュアンスについて、極めて些細なことをあげつらう論争は儀礼的、形式的に過ぎる嫌いがあって、ロータリーの精神とは異質のものである」と説いています。 時代の変化の激しい今こそ特に心すべきことで含蓄にとんだ言葉だと思っております。

 何故この様な話をするのか、とお思いでしょうがロータリーも今同じ思想の規制緩和を昨年の規定審査会で採択しました。
 人間誰しも楽にして良い結果を得たいものだと思いますが、これは堕落の道に繋がると私は思っているからです。 せめてロータリーだけでも正常な路を堂々と闊歩したい。 ですからこの素晴らしい「ロータリー哲学」に惚れ込んでこれを発展させたい、の一念から申し上げる訳です。 世界中が非行、不正、粉飾、金権が全ての社会から脱却してノーマルな社会を創造するのがロータリーの理念であります。 だから「ロータリーの哲学」を広く社会に流布するために組織の強化、拡大を図らなければなりません。 チャレンジしている時こそ自分に誇りがもてます。皆でチャレンジして誇りを持って取り組みたいものです。

 コロンビア大学社会学教授のハーバート・J・ギャンズ氏は「平等の欲求と理念」という論文の中で、経済部門でも「経済ももっと、民主化、社会化、平等化されなくてはならない。 企業は消費者、従業員、および一般大衆に奉仕すると言う、今までは企業の経営要綱には無かった倫理精神・同類精神を持って経営され、又企業活動に伴う社会的なもの、或いは必要でないと思われるような間接的な経費さえも負担するようにしなければならない」と説いています。 まさにロータリー精神そのものであります。

 地球の人口は昨年61億3千百万人に達しました「国際ロータリー」は世界中のポリオ撲滅のために、そのうち20億人にワクチンを投与し、此処22年ほどWHO、ユニセフその他多くの関係団体と協力し、ロータリアン120万人の力を結集し協力してまいりました。間もなくその目的を達成しようとしております。
 わずか世界の人口0.02%のロータリアンがこの力を発揮したのです。この実績は私たちに自信と気概を齎しました。
 そこで、私たちはもう一度クラブ活動を、原点に返って見直す必要があります。1905年ポール・ハリスの、クラブ創設時の経緯を振り返れば、当時の荒んだ社会、荒廃した商業道徳を立て直すことを考え異なる職業の3人に呼びかけ、ビジネス上の発展、社会浄化、商業道徳の確立と地域社会への奉仕活動を実施し、自己の職業の安定を基本として発足しました。
 職業の安定は顧客満足が基本で、高い職業倫理と相互信頼、つまりロータリーで唱える職業奉仕の実践が不可欠であります。
 以下活動のポイントを絞って要点を述べてみます。

1. クラブ地域のニーズの調査をして、地域と密着した活動計画を立てます。
2. クラブの現況調査、意識調査、会員のニーズ調査、をして過去の会員入退会の内容調査を実施します
3. クラブを活性化のための会合を開き、対応の検討を行います。
4. 職業分類の調査を行い、地域にマッチした職業分類を選定します。「職業別電話帳の活用等」(地域的に相違あり、実体把握できない場合に適用)
5. 具体的な増強・拡大の目標設定と、役割分担を決めます。
6. 目的意識を植え付けるためのフォーラムを何回も開きます。何よりも地域の人がロータリーを認識していただく努力は一番大切です。
7. クラブを楽しい例会にする為、運営をどうするかの変革も大事な要因です。
8. 奉仕活動に興味を持って貰う為の、奉仕活動指針等作成できれば、推進が容易になると思います。

以上述べましたが、実行は容易ではありません。 熱意を持つ、楽しくやる仕組みが一番大切で、楽しいから、得るものがあるから、人は集います、此処からクラブが蘇えります。衆知を集めて楽しいクラブを作り、前進しようではありませんか。 ロータリアンは綱領・R定款に反しない限り自由に自己の意見を主張し行動が出来るのです。 日本の良い慣習を生かして地域の繁栄から先ず始めましょう。 このことによって「グローバル・クエスト」運動も必ず150万人の会員目標を達成し、究極の目的である世界平和を目指して、有終の美を飾り、真に豊かで平和な世界の実現に向けて努力し、前進できると信じております。