顔写真 国際ロータリー第2840地区
パストガバナー 重田 政信
RI識字プロジェクト支援のお願い
 RIは、非識字(昔のいわゆる文盲)こそ、貧困をはじめとする諸悪の根源であると考え、1997年のRI理事会で、7月を識字率向上月間に指定しました。その後、識字問題は2005年までのRI強調事項となり、グレン・エステスRI会長も、その強調事項の第1に識字・教育推進を挙げておられます。たまたま国連は、2003〜12年までの10年間を「世界識字10年」に指定しました。今や識字・教育推進は、ポリオ・プラス計画の後を継ぐRIの重要なプログラムと考えられています。  現在の文明社会において、文字文化から隔絶されて生活するということは、社会から置き去りにされることを意味します。非識字者は正当な職に就けず、それに帰因する貧困は更にその子どもたちの就学の機会を奪い、途上国において非識字と貧困は悲惨な悪循環を生み出しています。
 世界には約10億の非識字者がいます。私たちには想像できない数字でありますが、これは15歳以上の大人の1/4に当たります。その3/4はアジア人であるといわれ、非識字者の2/3は女性であります。
 また、世界で1億3千万の就学年齢児が学校に行けません。ユネスコや我々の努力にも拘わらず、この数があまり減少していません。途上国の子どもが年々増え続けているので、学校に行けない子どもが増加する恐れもあります。また、折角入学した子どもも1/3は小学校を卒業していません。
 近年、メディア・デバイド或いは、デジタル・デバイドという言葉が聞かれます。これは、インターネットをはじめとする情報技術を駆使できる人達と、それに取り残された人達の決定的な情報格差を意味しますが、これは同時に経済格差をも意味します。現状のままでは世界人口の1/5に過ぎない先進国の情報技術が益々進歩し、南北間の貧富の差は更に広がり、地球規模の社会不安は一層増大するでしょう。ニューヨークでの同時多発テロの原因も、結局は貧富の差に根ざしていると言われます。これは我々に強い危機感を与えます。  現在、世界の人口は60億を超えました。更に年間約1億人、即ち毎年メキシコの人口に匹敵する人口増加を続けています。このまま人口が増え続いてゆくならば、資源に限りのあるこの地球の将来は暗いでしょう。しかも人口増加の99%は途上国で起きています。我々は折角予防接種で救った子どもたちを飢え死にさせてはなりません。また彼らに生き甲斐を持たせる教育と職業を与えなければなりません。
 途上国における人口増加抑制の最大のポイントは母親たちの教育です。途上国の少女が中等教育を受けるだけで出生率が低下し、先進国並になることが知られています。従って、教育、特に女性教育こそ、我々宇宙船地球号が生き延びてゆく上での最も効果的な手段であると言えるでしょう。
 また、我々は深刻な環境破壊問題に直面していますが、持続可能な地球を守るための環境保全にとって、最も強力な武器は識字教育であるといわれます。非識字者は環境教育からも取り残され、環境保全に無関心であり続けるために、無意識のうちに緑地の砂漠化や自然環境汚染を進行させることになり、これが途上国の自然を破壊しています。この非識字の悪循環を放置しておいては、私たちは到底平穏な世界を次の世代に残すことはできないでしょう。
 これが、私たちの進めようとしている識字・教育推進運動の今日的意義であり、正に「情けは他人のためならず」であります。確かに私たちは長引く不況のさ中にいます。しかし、今直ぐに識字・教育推進運動を展開しなければ、人類生存への我々の努力は手遅れになるでしょう。
 一方、日本国内に目を転じると、国連人口部は、少子化、高齢化社会を迎えた日本が、現在の生産性を維持するためには、年間60万人の外国人労働者を受け入れてゆく必要があると報告しています。これまで、先進国の中では例外的に単一民族国家としての道を歩んできた日本も、やがて諸外国の例のように、多民族国家への変貌を余儀なくされ、今後必然的に益々多くの外国人労働者を受け入れることになると思われます。現に日本国内で識字教育を必要とする外国人は着実に増えていて、彼らに対する識字教育は、大きな人道的問題であると共に、21世紀における日本の最も重要な国家施策となるでしょう。
 これに関連して、在日外国人子女に対する識字教育の必要性ついては、全国的なモデル地区とされている東毛のブラジル人への援助が緊急の課題となってきました。しかし幸い、2003-04年度に太田の4ロータリークラブ、及び大泉ロータリークラブのご尽力によって、この分野で日本最初の地区補助金による識字支援プロジェクトが実施されました。これは正に日本のロータリーにおけるパイオニア的な奉仕活動であり、関係者ご一同に心から敬意を表します。しかし、この外国人に対する識字援助の問題は、都道府県により状況が大きく異なるので、ロータリーはそれぞれの地元社会のニーズに応えるプロジェクトを考える必要があります。
 日本のロータリアンは、目下諸般に亘って厳しい状況下にありますが、識字教育プロジェクトの重要性をご理解頂き、RI識字および教育推進プロジェクトに宜しくご協力下さいますよう御願い申し上げます。
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