第1章  ロータリーへの道
第2章  クラブ奉仕
第3章  職業奉仕
第4章  社会奉仕
第5章  国際奉仕
第6章  ロータリーはどこに?
第1章  ロータリーへの道
綱 領
ロータリーの綱領は、有益な事業の基礎として、奉仕の理想を鼓吹し、これを育成し、特に次の各項を鼓吹、育成することにある:

第1 奉仕の機会として知り合いを広めること;

第2 事業および専門職務の道徳的水準を高めること;あらゆる有用な業務は尊重されるべきであるという認識を深めること;そしてロータリアン各自が業務を通じて社会に奉仕するために、その業務を品位あらしめること;

第3 ロータリアンすべてが、その個人生活、事業生活および社会生活に常に奉仕の理想を適用すること;

第4 奉仕の理想に結ばれた、事業と専門職務に携わる人の世界的親交によって、国際間の理解と親善と平和を推進すること。


ロータリーへの道

男性でも女性でもロータリー・クラブに入会する場合の一般的な手続は、「推奨クラブ細則」に述べられています。細則はクラブにより多少差があります。会員候補者は入会を決める前に、クラブ例会に1回は、招待されるでしょう。そこで、会員候補者は、その地域の広範囲な事業や専門職務に携わるクラブ会員に会い、ロータリー・クラブとは実際に何をしているかを学びます。

ロータリーの中心概念である職業分類制度により各クラブの会員構成は、地域社会における事業および専門職務の横断面になっています。会員は、自分の事業、専門職務または会社の事業により職業分類を貸与されます。クラブは、地域社会のすべての職業を調査して、職業分類表を作成し、その中の未充填職業分類に該当する新会員を探します。最終的な目標は、地域社会で一般に認められているあらゆる有用な事業、専門職務または事業活動に携わる代表者を入会させることです。

しかし職業分類がクラブの会員増加の妨げにならないように、クラブは5名まで同じ職業分類が認められています。また、会員数が51名以上のクラブの場合は10%以内の同じ職業分類が認められます。

ここで、入会前の会員候補者を例会に招待するという話に戻ります。会員候補者は、多種多様な人々の集まりであるクラブ会員と会話をはずませて親睦のひとときを楽しく過ごしたと仮定しましょう。その候補者はその日の例会プログラムと卓話者に感銘を受け、クラブが参加している各種の有意義な奉仕プロジェクトなどについて知ります。もちろん、一緒に食事をとります。例会の後で、会員候補者は、ロータリーに関心をもったこと、あるいは少なくともロータリーの会合に再びゲストとして出席する意思を表明したとします。クラブは、この時点で、所属クラブの会員に推薦するために、クラブ幹事を通じて会員推薦用紙をクラブ理事会に提出します。そうするとクラブ委員会のいくつかが、協力し始めます。この協力は、多くのクラブ・プロジェクトの達成方法に共通したものです。

クラブ理事会は、会員候補者が職業分類と会員資格の条件を満たしていることを確認し、この候補者の入会の承認または不承認を決定し、推薦者に通知します。理事会の決定が肯定的であった場合は、ロータリー情報委員会委員の1名または数名とともに、会員候補者に会い、ロータリーの目的と会員の特典と義務について説明します。

会員候補者が、これまでの説明をすべて頭に入れたうえでロータリー入会に関心のあることを伝えます。会員申込用紙に記入し、氏名と職業分類の公表を承諾します。

クラブに会員候補者の氏名と職業分類を発表後7日以内に、理事会がクラブ会員の誰からも推薦に対し、理由を付した書面による異議の申し立てを受理しなかった場合には、会員候補者は、入会金とクラブ会費などの支払と同時に、ロータリー・クラブの会員になり新会員として、ロータリーに関して学び始めることになります。
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第2章  クラブ奉仕
旅行していると、世界各地の町や都市に入ると、ブルーと金色の歯車のよく見なれたバッジの標識から、そこにロータリー・クラブがあることが分かります。また、宿泊するホテルのフロントでもこの標識を見ることがあります。ロータリーマークだけでは、166の国に広がるクラブを擁するこれ程大きな国際組織のもつ豊かな多様性を表すことはできないでしょう。それぞれのクラブはその国と地域の文化と習慣をロータリーに持ち寄り、それぞれロータリーの精神を母国語に移し変え、プロジェクトを地元に合わせ、地域社会で実施しているのです。

しかもロータリーは、先進国と開発途上国を問わず農村と都市の両方を包含しています。ロータリー・クラブの会員組織は、その地域社会の事業および専門職務を反映するものですから、開発途上国の農村の小さなクラブと先進国の大都市の大きなクラブが違うことは自明の理です。ロータリーの歯車に象徴されているのは、ロータリー・クラブがいかに違うかでなく、共通して持っているものです。ロータリーの定義の中心をなすのはこの共通性です。国際ロータリーの基本単位は、ロータリー・クラブであって、個人会員ではないことにご留意下さい。クラブを構成する職業分類保持者に対して自分の事業あるいは専門職務の代表者として果たす役割がクラブ会員をロータリアンと定義づけるものなのです。

すべてのロータリー・クラブは、規模や場所に関係なく、同一の管理方式を使っています。各クラブは、クラブ会長が、副会長、幹事、会計、会場監督、理事会の補佐を受けて運営します。理事会は、前述のクラブ役員並びに会長エレクトとクラブ奉仕委員長、職業奉仕委員長、社会奉仕委員長、国際奉仕委員長で構成されます。原則として、クラブの指導者は毎年入れ替わります。

国際ロータリー(Rotary International-RI)は、役員交替のときに継続性を保つため、毎年、総合的な研修プログラムを実施します。クラブ会長になる人は、就任前に、クラブ会長エレクト研修セミナー(Presidents-elect Training Seminar-PETS)に出席し、次年度のクラブ運営を成功させるために必要な情報と指導を受けます。地区協議会も、次期クラブ幹事やその他のクラブ役員研修として、毎年、開催されます。

指導力がいわばロータリー・クラブの心臓で、クラブの委員会は動脈です。さらに動力にたとえれば、クラブの指導力はイグニッション(点火装置)で、クラブ委員会は、エンジンと考えることができます。委員会は、各ロータリー・クラブの枠組です。標準的なロータリー・クラブ委員会組織案を見れば、理事会の下には、四大奉仕部門を担当する四つの主要委員会が設置されています。各委員会は、各種小委員会活動を監督します。

さらに、組織案では、クラブ会長エレクトまたは副会長が、職業分類、会員選考、会員増強、ロータリー情報委員会を調整するようになっています。これら四つの委員会の活動は、クラブ奉仕に属しますが、クラブの会員増強プログラムにとって重要なものですから、クラブ会長エレクトまたは副会長が監督することになっています。

これらの四つの委員会は、新会員をクラブに溶け込ませるために力を合わせ、他の委員会は、いろいろなプロジェクトにおいて協力します。ロータリー・クラブの行う多くのことは、まさに、各種委員会の協力の結果なのです。例えばRIでは、ロータリアンとクラブは、世界において1年に10ある「特別」月間中に、ロータリーの多種多様な面にスポットライトを当てます。特別月間とは、識字率向上月間(7月)、会員増強および拡大月間(8月)、新世代のための月間(9月)、職業奉仕月間(10月)また日本では米山月間も10月です。ロータリー財団月間(11月)、ロータリー家族月間(12月)、ロータリー理解推進月間(1月)、世界理解月間(2月)、雑誌月間(4月)、ロータリー親睦活動月間(6月)です。

クラブが新世代のための月間行事を計画するときごく自然に、いくつかのクラブ委員会が参加します。青少年活動は、社会奉仕の人間尊重委員会の領域ですから、人間尊重委員会が、クラブ・プログラムを準備するためにプログラム委員会と協力します。広報委員会は、地域内のロータリーによる青少年活動とクラブの各種青少年プロジェクトを推進します。クラブ会報委員会は、週報のクラブ会報やウェブで新世代のための月間行事を推進します。ロータリーにとって好評なクラブ・プログラムの一つは、青少年交換です。青少年交換プログラムは、青少年を海外に派遣し、そこで居住、勉学させます。また、海外の青少年を受け入れてクラブの地域社会で生活させ、勉学させます。多くのロータリー・クラブがこの活動に参加していますので、青少年交換プログラムを監督する国際青少年計画委員会も新世代のための月間行事に加わることでしょう。クラブが、高校生のための奉仕クラブ、インターアクト・クラブを提唱している場合、協同奉仕委員会も新世代のための月間行事に参加するでしょう。

クラブが、9月に実施する青少年関連プロジェクトに何を選ぶか、または何に重点を置くかにもよりますが、新世代のための月間行事に、他の委員会が協力する場合もあります。地元の高校で夕刻の職業相談会を開催する場合は、職業奉仕委員会が参加することになるでしょう。遊園地を造成したり改善したりするには、社会奉仕委員会か地域発展委員会が参加することになるでしょう。

委員会間の協力を示す一層端的な例として、ロータリー・クラブが一つのプロジェクトを実施するケースを見てみましょう。このケースでは、ロータリー・クラブが、開発途上国の農村に近代的な農業設備と技術を提供するために、世界社会奉仕プロジェクトを開始しようとしています。この場合、世界社会奉仕委員会は、多分、ロータリー財団委員会と協力して、ロータリー財団のマッチング・グラントを申請して、プロジェクトの資金の一部を援助してもらおうとするでしょう。

クラブ委員会組織案に従えば、効率的にクラブを運営できますが、その本当の利点は、クラブ全体が、それぞれの委員会活動に参加できることです。クラブ会員は、毎年、各種委員会の少なくとも一つの委員会の委員を務め、やがては、多くの委員会の委員を経験するようにならなければなりません。このようにして、ロータリー教育は完璧なものとなります。

前述した「エンジン」の例えに戻り、クラブ委員会を運営する「燃料」を説明します。クラブとクラブ会員は、奉仕の理想で鼓舞されますが、この奉仕の精神を明確な形にし、エンジンを動かすのが広範囲にわたるロータリー・プログラムなのです。これらのプログラムは、四大奉仕部門のすべてにわたり、社会の多くのニーズに取り組み、ロータリアンがそれぞれの地域社会で、また地域社会を越えて世界で貢献できる方法を提供しています。ロータリー・クラブは、地元のニーズに最もふさわしく住民の関心と必要性の高い活動をこの幅広いプログラムから選びます。
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第3章  職業奉仕
職業奉仕とは何か

ロー夕リーの創始者ポール・ハリスは、その自伝「ロータリーへの私の道」の中で「ロータリーの会員は、その一人ひとりが、自分の職業とロータリーの理想とを結ぶ環である」と書いています。ポール・ハリスは、この文章において、職業奉仕について直接触れているわけではありませんが、第二奉仕部門を念頭に置いていることは間違いありません。なぜなら、ロータリーは職業分類の原則に基づく会員組織なのでロータリアンと職業とを切り離して考えることができないからです。クラブ会員は、自己の職業の代表者としてロータリーに入会したのですから、同僚ロータリアンに対しては自己の職業の代表者となり、ロータリアン以外の人に対しては、ロータリーの精神を普及する責務を負います。この二つの責務が職業奉仕の基盤となります。

このように考えると、ロータリーの他の奉仕部門−クラブ奉仕、社会奉仕および国際奉仕−がクラブ会員全員による協力活動を強調しているのに対して、職業奉仕は、ロータリアン一人ひとりが職業に携わっている中で自ら職業を通じ奉仕することを主として強調しています。

ロータリアンは、職業奉仕の基本として、自分に次のように問いかけなければなりません。「他の人にもう少し優しくなり、力になってあげるために、日常の仕事の中で何ができるだろうか」。いわゆる職業奉仕は、日々、この基本を実践しなければならないものだからです。

個々のロータリアンがこういった職業奉仕の成果を測る尺度があるでしょうか? 必ずしもあるとはいえません。なぜなら、職業奉仕の分野は、世界中のロータリアンの無数の交流と日々の決断を通じて広がっていくからです。どれも、毎日の仕事に意味を与え、職場に尊敬の念を与えることを目指しています。

世界中のロータリアンが職業奉仕をどのように定義しているか、その例をいくつか紹介します:
●「職業奉仕とは、生活の資を得る方法を、生きがいに変えるものです」。
●「職業奉仕とは、職場で、そして、生活の中で、ロータリーを生かしていくことです」。
●「職業奉仕は、働きよい職場をつくり、地域により一層奉仕することです」。
●「職業奉仕とは、専門職業や、実業、工業、商業などにおける生活水準を向上させていくことです」。
●「職業奉仕は、職業に誇りをもち、正直かつ品位のある方法で職業を実践しようとするものです」。

これらの定義からも分かるように、職業奉仕にはいろいろな取り組み方があります。しかし、基盤は一つです。ロータリアンは、職業を通じて社会に貢献しなければならない、ということです。

この章では、個人とクラブの両方における職業奉仕の実践方法を定義するとともに、職業奉仕と他のロータリー活動の関連についても述べています。このようにして、ロータリーの第二奉仕部門の重要性を明確にしようとしているのです。日本では職業奉仕がロータリーの金看板と言われ、ここから他の奉仕部門のクラブ奉仕、社会奉仕、国際奉仕などが分かれていったのです。

一つのアイディアの発展

20世紀に入ってまだ間もないころ、米国イリノイ州シカゴの青年弁護士ポール・ハリスは、一つのアイディアを抱きました。友情とビジネスを混ぜ合わせたら、友情もビジネスも増えるのではないかと。そこで、ポール・ハリスは、3人の友人とともに、のちのロータリー運動の口火を切ったのです。これは、全世界に発展し、今や、会員数は121万を超えています。ポールのこのアイディアは、当時としてはどう考えても異例といえるものでした。なぜなら、当時は、シカゴでも、どこでも、企業家は、富と勢力の追求において政府から何の制約も受けていなかったからです。当時の実業家は声高に次のように述べました。「商売は商売だ」、「買い手こそ注意しろ」、「競争には情無用」、「世間が何だ」と。利益が最優先され、野放しの資本主義でした。言い換えると、当時は、同業者は敵とみなされ、同業者の1人を倒産に追い込めば、大喜びし、気がとがめるなどということはなかったのです。

また、この時代には、ドイツの社会学者カール・マルクスの考え方がヨーロッパで大反響を呼び、その結果、経営者と労働者のあいだの「階級闘争」は、ときには、血なまぐさい衝突を引き起こしていました。1893年にシカゴで万国博覧会が開かれていた頃、当時はまだ法学部の学生だったポール・ハリスは、米国バーモント州からアイオワ州に向かう途中、シカゴで1週間過ごしました。中西部の喧噪(けんそう)うずまく都市の落ち着きのなさと無法ぶりに、ポールは、「不可解な魅力」を感じたのです。このため、数年後に、ポールは、金もうけのためでなく、生きがいを求めて、荒っぽく闘争的で、矛盾に満ちたシカゴに戻ってきたのです。

シカゴは、大発展を遂げていたので、若い弁護士が開業する、うってつけの場所でした。だから、ポールはシカゴに戻り、法律事務所を開いたのです。バーモント州にいたときと同じような温かい交友を楽しむため、親しい友人をつくりたいと何よりも望みました。そこで、小クラブを創設したのですが、これが31,600以上のロータリー・クラブの発端で、同種の奉仕クラブも相次いで誕生したのです。クラブ内では、友情とビジネスが溶け合い、より一層、友情とビジネスを大きなものにしたのでした。

ポールは、当時、同業者間の親睦の難しさを痛感していました。そこで、一業種一人と会員を制限したのです。これが、ロータリーの職業分類制度の始まりで、このため、競争相手とならない友人の輪をつくりだすのに成功しました。

他の会員から商売上の利益が得たくて入会した人もいましたが、クラブ内の温かい雰囲気に包まれ、もっと満足できるもの、すなわち親睦を見いだすようになるまでに大して時間はかかりませんでした。他の職業の人と話し合い、友情を温める機会、また、他の人と地域全体を思いやり、力を貸す機会を見いだしたわけです。

ポール・ハリスは、「ロータリーへの私の道」の中で次のように書いています。「彼らは、優しい心と友好的な精神からにじみ出るあらゆる方法で、お互いを助け合いました。主として、ビジネスの中でお互いを助け、成功するように援助し合うことに努力が傾けられました。その方がよいとされる場合には、お互いに顧客となり、必要な場合にはお互いに相手のためになるように力を貸したり、助言を与えたりしたのです」。

「ためになるように力を貸す」ということは、初期のロータリアンが、「ロータリアン以外」の友人や知人に、自分の同僚ロータリアンを援助するよう頼むことであり、「助言」も時々必要でした。誤解を招きやすい広告だとか、顧客を迎えられるよう正面に机を移動したほうがよいとかロータリアン同士で助言し合ってきたわけです。

国際ロータリーの初代事務総長で、32年間もその地位にあり、ロータリーを今日のようにした最大の功績者のひとりであるチェスリー R.ペリーは、1955年、米国イリノイ州ラサールで開かれたロータリーの職業関係会議で次のように述べました。

「初期のロータリアンたちが、みんな天使のようであったということはありません。是正すべき点が、いくつかはあったと思われます。とにかく、品物の質も仕事ぶりも最高とはいえず、仲間のロータリアンでさえも、その顧客になるのを尻込みするような会員もいたのです」。

高度の職業上の水準があるなら、これを見つけ、採用し、ビジネスにおいて「ロータリアン」というときは、純銀製品に刻印される“sterling”に匹敵しなければならないということが、当時のロータリアンにも次第に明らかになってきました。

これは重大な認識でした。というのは、このとき、ロータリーは初めて倫理的商取引(現在の職業奉仕)の重要性に注目したからです。これは、最初のクラブ、シカゴRCから始まりました。友情とビジネスを混ぜ合わせた当然の結果です。

しかし、職業奉仕は、これだけにとどまりませんでした。アーサー・フレデリック・シェルドンがシカゴRCに入会したとき、ロータリー発祥3年後に、現在のロータリーの理想の原形がつくられ始めたのです。彼は、職業間の関係を推進し、セールスマンシップを築いた人なので、「職業は社会に奉仕する手段である」と他のロータリアンに納得させることができました。程なく、シカゴRCは、「商取引の方法のための委員会」を設置し、シェルドンが委員長となりました。ロータリアン一人ひとりの商取引の方法は、同僚ロータリアンだけでなく一般の人々の信頼も得なければならない、という見解を普及させ、その実施を援助することを目的としました。サンフランシスコ、シアトル、その他の都市にロータリー・クラブが結成されると、これらのクラブもまた商取引の方法に特に注意を払いました。

1910年に最初のロータリー大会がシカゴで開かれ、全米ロータリー・クラブ連合会が結成されたとき、大会委員長は、出席者にこう語りました:
「私たちは、世界において進んで自己の任務を果たし、公徳心を高めたいと願い、職業において高度の道徳的水準を守りたいと思っています」。大会の閉会時に、シェルドンは、職業倫理の重要性を強調し、腐敗や不正は排除しなければならないことを明らかにしました。そして、次のように語りました。「19世紀の商慣習の特徴は、競争です。出し抜かれる前に出し抜け、ということです。20世紀に入り、人類は賢くなりました。20世紀の特徴は協調です。人間は、英知の光に照らして、『正しい行為は報われる。職業は人類の奉仕の科学である。最もよく仲間に奉仕する者、最も多く報いられる』ということが分かるようになりました」。この言葉は、長く残ることになります。

翌年、ポートランド(米国オレゴン州)大会で、ロータリー初期の指導者の一人が、他の人に奉仕することの重要性について語りました。米国ミネアポリスRCの当時の会長、B.フランク・コリンズがその人で、自分のクラブで採用した原則、‘‘Service, not Self”(無私の奉仕)によってクラブを組織するとよいと述べたのです。この二つの標語は、少し修正されて、「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる He Profits Most Who Serves Best」と、「超我の奉仕 Service Above Self」となり、早くも1911年に使われていました(公式の標語となったのは1950年のデトロイト国際大会)。

1912年のダルース(米国ミネソタ州)大会では、全ロータリー・クラブのために五つの綱領(目標)が採択されましたが、その二つは職業倫理に関するものでした:「あらゆる合法的な職業は推進、尊重されるべきであり、ロータリアン各自が社会に奉仕する機会を与えられるようにその職業を品位あらしめること」と「事業および専門職業の道徳的水準を高めること」。

このように、ロータリアンは、草創期から、「職業倫理」を真剣に受け止めてきました。1916年(米国オハイオ州シンシナティ)以降の国際大会では、同一または同種の職業人の分科会が開かれました。1915年サンフランシスコ国際大会で道徳律が採択されていましたので、これらの分科会では、道徳律を基盤とする職業上の実務基準の作成について審議しました。1920年代には、公正な商慣行が多くの同業組合で採択されました。アメリカ・レストラン協会や英国の自動車販売業団体などがその一例です。事実、ロータリーの有形無形の影響で、会員は自己の職業を社会に奉仕する機会とみなすようになりました。

この間に、ロータリーは大西洋を越え、イングランドとアイルランドで1911年にクラブが設立されました。英国のロータリアンも北米の多くのロータリアンも、商取引の方法(business methods)という言葉を飽き足りなく思っていました。ですが、職業を通じての奉仕プログラムに盛り込まれたすべてを数語で表現することは容易なことではなかったのです。

ロータリーは、ようやく、奉仕の四分野(field、のちに部門Avenue)という考えに到達しました。クラブ、地域社会、国際的分野、それに、business、professionまたはoccupationという分野です。後に、“Vocation(職業)”という言葉なら、何もかも含まれるのではないかという意見があり、1927年オステンド(ベルギー)国際大会以降、職業奉仕(Vocational Service)という用語が「商取引の方法」に替わって、公式のものとなりました。

1930年代の大恐慌期に、第2奉仕部門は重大な発展期を迎えました。ハーバートJ.テーラーが四つのテストを創案したのです。商取引の公正さを測る尺度で、以後、多くのロータリアンがこのテストを活用してきました。

年月が経過し、ロータリーが多くの国に広がるにつれ、道徳律を一律に適用することは無理になってきました。この道徳律を世界各地で一律に実践しても効果がない、と考える人が多くなったためです。1977年規定審議会(ロータリーの議会)では、その総意によって、現時点においては、全世界にわたり道徳の高揚、復興をはからなければならない」と決議し、RI理事会に対して、ロータリー道徳律の刊行と頒布の再開に努めるよう要請しました。理事会は、この決議を審議した結果、次のような決定を下しました:「1915年の道徳律採択以来、事業および専門職業活動分野に諸種の変化が生じているため、道徳律を現今の時世に合うように改訂することはすべて無駄である」。

職業奉仕の進展に長くその足跡をしるしてきた道徳律も、1978年には配布中止となり、1980年の規定審議会は、国際ロータリーの細則を改正して道徳律に関するすべての記載を削除してしまいました。

職業奉仕の機会

職業奉仕というのは、ロータリーの奉仕という概念を、事業、専門職業および職場に適用することにほかなりません。だから、ロータリアンは、職業奉仕の原理を実行に移す前に、従業員や仕入先、顧客、共同経営者、株主、同僚などとの日常関係を反省する必要があります。ロータリーの綱領の第2項を実践する方法は、ほかにはありません。ロータリーの綱領は、次のことを理解し、実践するよう教えています。

「事業および専門職業の道徳的水準を高めること。あらゆる有用な職業は、尊重されるべきであるという認識を深めること。そして、ロータリアン各自が職業を通じて社会に奉仕するためにその職業を品位あらしめること」。

ロータリーの綱領の中の職業奉仕に相当する本項を遂行するために何をしているか自己の良心に照らし合わせて判断するよう各ロータリアンに要請するのが、この綱領の目標です。これは、主観的な問題ですので、この理想に沿って生きているかどうか知っているのは、当のロータリアンだけです。ロータリアンは、個人として、職業奉仕を遂行するよう勧められていますが、多くのクラブは、第2奉仕部門の機会と責務を会員に知らせるプログラムや実際的な団体活動を開発してきました。

この点に関し、最も重要な人は、クラブの職業奉仕担当理事です。この分野におけるあらゆる活動を調整するとともに、クラブ会員に対し、「職場にロータリーを生かす」よう奨励するという大きな責務を負っています。

国際ロータリー理事会は、職業奉仕推進のため、10月を「職業奉仕月間」に指定しました。この月間中、ロータリアンは、次のようなプロジェクトに参加することによって、第2奉仕部門に尽力するよう要請されています;若い人への職業情報、特に、就職を控えた学生に対する職業情報の提供、優秀な従業員への職業奉仕賞の贈呈、従業員を表彰するための親切競争の主催、職業セミナー、ロータリー・クラブ会員の事務所や職場の訪問、四つのテストの推進など沢山のプロジェクトがあります。適切に遂行すれば、職業奉仕月間中、職業奉仕の精神に火をつけることができます。

四つのテスト:

人生の指針
1940年以来、多くのロータリアンが、自分の職業、地域、個人レベルにおける言行の尺度として、四つのテストを使用してきました。職業奉仕にふさわしい言葉と認められていますが、問いかけているだけで、答は出していません。

四つのテスト
言行はこれに照らしてから
1)真実かどうか
2)みんなに公平か
3)好意と友情を深めるか
4)みんなのためになるかどうか

・真実かどうか――これは「嘘偽りはないか」、「本当のことか」という意味であり、自分に問いかけている。
・みんなに公平か――これは関係するすべての人に公平かどうかということである。ロータリアンの仲間だからとか、特別の関係にある人だからとか、他のことで便宜をはかってもらった人だからとかいって特別に便宜をはかってはならないことをいう。
・好意と友情を深めるか――「取引に愛を込めて」という意味は、このことである。取引で関係者間に信用という精神的絆ができ、好意と友情が生まれると素晴らしいことである。
・みんなのためになるかどうか――職業倫理の目標は、みんなのためになることである。その取引に関係した人たちすべてが等しく幸せになることから始まり、それが社会全体のためになるということに繋がるのである。

世界中のロータリアンがこれを用い、また、他の人たちとこれを分かち合ってきました。教育者、学生、同業者にも、この四つのテストが数多く配布されてきました。

四つのテストは、いかなる意味においても、「規則」として取り扱われてはなりません。また、規範でも教義でもなく、自己評価を促すものです。誓約でもなく、自分を高める飛躍台です。職業上のどのような慣行が許されうるものか、文化によって異なりますが、四つのテストの精神は、あらゆる文化に属する人々の簡単で、実際的な指針となります。

四つのテストはどのようにして生まれたのでしょうか?
このテストは、1932年の世界大恐慌のとき、シカゴのロータリアンであり、のちにロータリー創始50周年(1954−55)に、国際ロータリー会長を務めたハーバートJ.テーラーが考えたものです。シカゴに本拠をおくジュエル・ティー株式会社の代表役員であった、ハーバート・テーラーは、1932年にクラブ・アルミニウム製品株式会社を破産の危機から救ってほしいと要請されました。このチャレンジに応えて、ジュエル社を去り、クラブ・アルミニウムという沈みかけた会社と浮沈を共にする決心をしました。

大不況の中で、低迷していたこのクラブ・アルミニウムを再生させる方法を見いだそうと、ハーバートは、会社の全従業員が使えるような倫理上の尺度を一心に模索しました。「答がすぐに浮かびました。そして、この四つのテストを書き上げました。どうして質問形式にしたのかよく尋ねられましたが、本当のところ、なぜだか分かりません。こういう形で浮かび上がっただけですから」。

テーラーの会社の4人の部長は、それぞれカトリック、クリスチャン・サイエンス、正統派ユダヤ教、長老派ですが、全員、このテストが、自分の信じる宗教に合致するだけでなく、会社や個人の生活にも模範となる価値観を与えてくれると述べました。

四つのテストは簡単な言葉ですが、クラブ・アルミニウム会社の苦境期の決定を下す基盤となりました。会社には40万ドルの負債がありました。まもなく、会社の広告を、テストに照らし合わせて検討し、「最上」「極上」などの表現を避け、製品の実際の姿を手短に述べるように変えました。ライバル会社への非難、悪口は、広告や販売推進パンフレットから姿を消しました。

従業員に四つのテストを暗記するよう求めました。やがて、テストは、仕事のあらゆる面において指針となりました。その結果、信頼と好意の雰囲気が、取引先や顧客や従業員の中にはぐくまれ、クラブ・アルミニウム社の業績が次第に好転していきました。そして、これは、つまるところこのテストのおかげである、ということになったのです。1937年までに40万ドルの負債は利子とともに完済されたのです。その後の15年のあいだに、会社は株主に対して100万ドル以上の配当を行い、その資産は200万ドル近くになりました。「このテストを暗記して実際に使う人はだれでも、必ずよい結果を得られる」と、このテストの創案者は言っています。テストによって自分の生き方が変わった、と述べる手紙が数えきれないほどハーバート・テーラーの元に寄せられたということです。

テストされた「テスト」

四つのテストは、安全運転プログラム、防火キャンペーン、犯罪・麻薬対策活動にも貢献しました。強硬な労働組合も賛同しました。学校のエッセー・コンテストのテーマにもなりましたし、修士論文のテーマにもなりました。四つのテストは、道路標識に書き込まれたり、ブロンズのプラークに刻み付けられたり、包装紙や教科書の表紙に印刷されたり、トラックの車体に描かれたり、映画やラジオ.テレビにまで登場したりしました。また、ロシア語や国際語エスベラントも含めて100以上の言語に翻訳されています。1942年に、国際ロータリーの理事であり、のちに財務長になったシカゴRCのリチャード・バーナーが、ロータリーとしてこのテストを採用することを提案しました。翌月、1943年1月の国際ロータリーの理事会においてこれを承認しました。テストは、主として、職業奉仕プログラムにおいて、力を発揮しましたが、四大奉仕部門すべてにおいて、なくてはならないものと考えられました。

「日本は、全世界に先駆けてこのテストを実際に使った」と、ハーバートJ.テーラーは言っています。1954年にテストをクラブのバナーに最初に入れたのは、大阪RCでした。福岡県の門司では、生徒たちにテストをいち早く広めるために、教室にポスターを張りました。門司の町では、学校だけでなく、病院や駅、工場などにもこのテストが掲げられています。

日本のあるクラブは、ユニークなプロジェクトを始めました。思いがけず雨に降られたときに備えて、駅に貸しガサを置き、通勤客にカサを貸しますが、そのカサの内側に四つのテストを印刷したのです。

ロータリアンは、若い人に深い関心をいつも寄せていました。四つのテストを学校に導入すれば、ロータリーの理想を効果的に広めることができる、ということが証明されています。四つのテストをテーマとして、学校側と協力して、弁論大会、エッセー・コンテスト、ポスター・コンテスト、寸劇などを主催して、賞を出した例は枚挙にいとまがありません。

職業奉仕に関する声明(Statement on Vocational Service)

1987-88年度RI理事会は、次の職業奉仕に関する声明を採択しました。

職業奉仕とは、あらゆる職業に携わる中で、奉仕の理想を生かしていくことをロータリーが育成、支援する方法である。職業奉仕の理想に本来込められているものは次のものである。

1) あらゆる職業において最も高度の道徳水準を守り、推進すること。その中には、雇主、従業員、同僚への誠実、忠実さ、またこの人達や同業者、一般の人々、職業上の知己すべてへの公正な取り扱いも含まれる。
2) 自己の職業またはロータリアンの携わる職業のみならず、あらゆる有用な職業の社会に対する価値を認めること。
3) 自己の職業上の手腕を社会の問題やニーズに役立てること。


ロータリアンの職業宣言
(Declaration for Rotarians in Business and Professions)

1989年の規定審議会は次の職業宣言を採択しました。

事業または専門職務に携わるロータリアンとして、私は以下の要請に応えんとするものである。

1) 職業は奉仕の一つの機会なりと心に銘せよ。

2) 職業の倫理的模範、国の法律、地域社会の道徳基準に対し、名実ともに忠実であれ。

3) 職業の品位を保ち、自ら選んだ職業において、最高度の倫理的基準を推進すべく全力を尽くせ。

4) 雇主、従業員、同僚、同業者、顧客、公衆、その他事業または専門職務上関係を持つすべての人々に対し、ひとしく公正なるべし。

5) 社会に有用なすべての業務に対し、当然それに伴う名誉と敬意を表すべきことを知れ。

6) 自己の職業上の手腕を捧げて、青少年に機会を開き、他人からの、格別の要請にも応え、地域社会の生活の質を高めよ。

7) 広告に際し、また自己の事業または専門職務に関して、これを世に問うに当たっては、正直専一なるべし。

8) 事業または専門職務上の関係において、普通には得られない便宜ないし特典を、同僚ロータリアンに求めず、また与うることなかれ。

この職業宣言は、ロータリーの綱領・倫理宣言・道徳訓などの一連のロータリーの思想の流れを強調し確認するものです。ロータリーの綱領の「ロータリーの目的」についてさらに具体的にその実践の細目をあげて、改めてロータリーの倫理化の推進の目的を明確にしているのです。その中でも上記第2項では国法を超えた「人倫の道とか道徳」と言われる高い倫理基準に名実共に忠実であるべきことを厳しく教え、第3項には「職業の品位を高め」とあり、また「天職」という思想をうちに秘めて、「自ら選んだ職なのだからその職業に最高の倫理基準を推進せよ」と厳しく自らに命じています。第7項では誇大広告の禁止と、第8項にロータリアンへの特典贈与を戒めています。
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第4章  社会奉仕
あなたが奉仕を志向する市民として、ある日自分が暮らしている地域社会のために何かをしよう、と決めたとします。素晴らしい考えですが、何から始めますか? あなたの時間と資金は限られていますが、できるだけ意義あることに貢献したいと思うことでしょう。町を見回すと、恐らく、雑草で覆われた小さな公園に気がつきます。あるいは新刊書を必要としている公共図書館があることに気がつくことでしょう。

しかし、地域社会の問題は表面化しているものが非常に少なく、根が非常に深いものです。生活が苦しいために、しばしば食事を減らしてやっと生きている孤独な外出のできない高齢者がいます。薬物濫用者であることを認めないで、生活が破壊されるのを顧みない人がいます。人目にはつきませんがこれらの問題すべてが、地域社会に悪影響を与えます。一方、問題が極めて表面化しているものの、一人で解決するには手に余るものもあります。犯罪と失業の増加、大気汚染と有害廃棄物、事業の機会や職業訓練あるいは手頃な価格の住宅の不足、ホームレスの窮状、健康管理の危機。これらの問題は、ひとりのボランティアでは、多分、太刀打ちできないでしょう。

あなたの力を、どのような優先順位で使えばよいでしょうか? あなたは、最初に、どの問題に取り組みますか? 問題を解決するための最も効率的な方法は、何でしょうか?

あなたが、これらのことを決めなければなりません。これは、どのロータリー・クラブでも、計画を練るときにぶつかる問題です。

多くのクラブは、地域社会のニーズに関する非公式な調査から始めます。この調査では、これまでのプロジェクトで範囲を拡張できるものを考慮したり、または以前にクラブの力では無理と考えられていたプロジェクトを再検討したりします。地域社会に最も関連するロータリー・プログラムはどれか、また公式に認められた活動の範囲外である奉仕とはどのようなものであるかも決定しなければならないでしょう。

クラブが周辺に及ぼす影響力を見るには、そのクラブのロータリー・プログラムの範囲を見るだけで十分です。それではロータリー・クラブが地元で生活の質を向上させている活動に焦点を当てながら、ロータリー・プログラムの範囲を見てみましょう。

高齢者への心づかい

高齢者への援助は、ロータリー奉仕の中心を占めてきました。ロータリアンは、外出できない高齢者には、温かい食事を配達して話し相手になり、外出できる高齢者には、買物や社交の機会のための交通の便を図るなどの、各種の基本的な奉仕を提供することを伝統としてきました。クラブは、養護施設の建設や改善、また医療の向上に必要な医療設備や救急車を地元の病院に提供しました。

しかし、20世紀の後半にわたり、男女ともに高齢化が急速に進むにつれて、こうした奉仕のニーズも多様化しました。医療技術、保健や介護関連分野の進歩のおかげで平均寿命は伸びましたが、高齢者に関する問題の改善では、ほとんど進展がみられません。高齢者人口は年々増加していますが、社会福祉機関は、この厳しさを増す情勢に対応できずにいます。

この問題を認識したRI理事会は、高齢者のニーズに応える奉仕活動を増やし、高齢者のためのプロジェクトだけでなく、高齢者と協力するプロジェクトを開発することをロータリー・クラブに奨励しました。高齢者がそれぞれの知識と経験を若い世代の人々に伝え、引退後も長く地域社会で活動し、必要とされるような機会をロータリアンは、今、探しています。

ロータリー・クラブの高齢者プロジェクトは、広範囲にわたります。例えば、ちょっとした行為としては、米国、アーリントン・ハイツのロータリアンの例を挙げることができます。ここでは、ペットが高齢者の治療に役立つと分かると、毎日数時間、地元の養護ホームに、自分の愛犬を置きにいくことを始めました。この例と対照的に、大規模なものとして、南アフリカのヨハネスブルグ北セントラルRCは、低価格住宅の建設を計画し、資金を援助したばかりでなく、ローンの返済を援助し続けています。

今日、健康上の不安は、高齢者の最も大きな問題の一つであることは明らかで、多くのロータリー・クラブが力を注いでいます。米国、ダンベリーRCは、政府の資金援助が削減された地元のインフルエンザ予防接種センターの支援を引き継ぎました。インドのコインバトレ・セントラルRCは、高齢者のためのクリニックを設立し、毎年、約2千人の高齢者の健康診断、無料の医療を提供し、必要な場合、専門医を紹介しています。

いろいろな健康管理を支援しているクラブもあります。カナダのキッチナー・コネストガRCのロータリアンは、高齢者の電話と地元の病院がつながる緊急警報装置を設置するために20万カナダ・ドルを超える額を寄付しました。このようにして、高齢者を直ちに救援できる態勢を整えています。

栄養不良は、多くの高齢者が直面するもう一つの深刻な問題です。栄養不良は、経済的な理由による場合もありますが、体力が衰え、孤独で気持が沈んでいると、高齢者は自分の健康を気づかう余裕がなくなることもあります。フランスのベルビル・レ・ドゥ・フルーブRCの会員は、この両方の問題を解決するために、1人暮らしの高齢者に温かい食事を届けるだけでなく、配達のたびに話し相手になっています。

高齢者の心のニーズに取り組むことは、常に、ロータリーの奉仕に欠かせないことです。心理的な問題は、放置すれば身体的な苦痛と同じように、悪化するとロータリアンは認識しています。ブラジルのカンピナス西RCは、無為と体力の減退による情緒障害をもつ高齢者のための教育プログラムを援助しました。

孤独はしばしば情緒障害を悪化させますので、孤独をいやす活動として、ロータリー・クラブは、地元地域社会で高齢者に社交の機会をいろいろ提供してきました。多くのロータリー・クラブは、毎週、地元の養護ホームを訪問しています。英国のバーミンガムRCは、休日に、地域社会の高齢者がピクニックなどの屋外行事に参加できるよう手配しています。

高齢者の多くは豊かな人生経験をもっていますから、若い世代が学ぶべきことが沢山あります。このことを認識して、多数のクラブが、高齢者と若い人たちが交流するプロジェクトに着手しています。このプロジェクトは、高齢者にも若い人にもためになるでしょう。米国のホルブルックRCは、若い人と高齢者のコミュニケーションの向上を図るために、地元の高齢者が若い人のグループに自分史を語り、若い人たちが記録するというプログラムを実施しました。

薬物濫用とアルコール過飲防止

薬物濫用による死者数、または薬物濫用を続け生活を破綻させる人の数は、年ごとにますます増加し続けています。世界各地で、薬物濫用の犠牲者が出ていますが、薬物濫用の犠牲になりがちなのは、主に若い人たちです。

被害は、亡くなった人や破滅した人の数だけではありません。薬物濫用は、薬物濫用者本人と家族を苦しめるだけでなく、犯罪、暴力、ホームレス、貧困などのより大きな社会悪の温床となっています。

国際ロータリーは、1980年代始めから、ロータリー・クラブに地域社会で薬物濫用とアルコール過飲防止に取り組むよう要請しています。国際ロータリー理事会は、1992年に、薬物濫用およびアルコール過飲防止10カ年計画を採択し、熱意を新たにしました。

ロータリーにおける薬物濫用防止活動の真の対象は、青少年です。ロータリーは、この青少年の年齢層のできるだけ早期に薬物濫用防止について支援の手を差し伸べようと努めてきました。

小中学生に薬物濫用防止を推進するために、クラブは、学校へクラブの教育プログラムを直接に紹介してきました。あるいは学校を基盤にした国際規模の薬物濫用防止プログラムの一つを支援してきました。専門家を教室に派遣し、薬物とアルコールを試してみたい誘惑に打ち勝つ方法を学童に指導させています。このプログラムの対象は、小学校5年生と6年生でしたが、全学年を対象とするようになり、12年生までを含めています。このプログラムは、同年代の青少年から薬物とアルコールを誘われたとき拒絶するうえで効果のあったことが立証されています。

青少年が同世代の非行グループの誘惑をはねつけるのに必要な自信をもたせることが、薬物とアルコールに手を染めないために不可欠です。ピア・サポート・プログラムは、オーストラリアで始められたものですが、中学1年生に家族規模の支援グループを派遣します。上級生は、グループ討論のリーダーおよび友人として活動しながら、年齢11歳と12歳の生徒が薬物濫用や飲酒その他の反社会的な行動をしないよう指導します。ロータリアンは、このプログラムの主要な支援者で、ピア・サポート財団を設立し、オーストラリアとニュージーランドにこのプログラムを広めました。

識字率の向上

世界の読み書きできない非識字人口は推定8億8千万人です。日常生活に必要とされることを処理できるだけの読み書き能力のない機能的非識字者は、もっと多数います。問題は広範囲で、必ずしも開発途上国に限られていません。先進国でも深刻な問題となっています。

非識字者にとっての損失は、私たちにとっても損失なのです。非識字者が、社会に有意義な貢献をする機会を得られないだけではありません。この問題は、非常に多くの点でマイナスをもたらします。簡単な指示書を理解できない労働者は、工業の進展をはばみます。標識またはラベルに印刷された注意書を理解できないため、事故が起こります。インドでは、毎年、大きな交通事故が4万件発生していますが、事故の主因は、トラックの運転手が交通標識を読めないためです。

非識字による問題は、就職困難を始めとして、人に読み書き能力不足を知られないようにするストレスなどいろいろあります。さらに、地域社会に悪影響を与える多くの問題の温床にもなります。アルコール過飲、薬物濫用、犯罪もこの問題の一部です。

国連は、非識字問題を経済、政治、社会の発展を阻む最も重大な障害の一つと判断しました。RI理事会は、識字率向上を推進する必要性を重視し、1986年に、これをロータリーの10カ年強調プログラムに決定しました。その後、理事会は、西暦2000年までの延長を決定し、機能的非識字者の援助に重点を置くよう規模を拡大しました。ロータリー・クラブは、早速、多種多様な方法でこれに応えています。

職業奉仕を重要と考えるロータリアンが、非識字問題の職場への影響に関心を示すのは、ごく当然のことです。オーストラリアのハミルトンのロータリアンは、この問題に雇主の理解を深めるためのセミナーを開催しました。

識字教育の推進者が直面する最も困難な問題の一つは、聴講を受けてほしい人々への連絡を徹底することです。とりわけ講習を受ける必要があるのに恥ずかしくて講座を積極的に探そうとしない人々がいるという場合がよくあります。

大規模で国際的なロータリー識字プロジェクトは、1987年から1992年にかけてタイで実施され、ロータリー財団から資金提供を受けました。このプロジェクトでは、語学力強化研修講座(Concentrated Language Encounter-CLE)が使われました。プログラムは大成功を収めたため、タイ全土の全ての公立学校で採用され、他国のロータリー・クラブや地区で活用されています。

日本国内でも最近は在日外国人労働者が増加しています。しかし、日本語能力が不足のため、その子ども達は、公的サービスの恩恵を十分に受けていないという問題があります。私達は地域のニーズを調査し、ロータリアンとして地域の識字率向上にも目をむけるべきです。

病める人と身障者を援助

重い身体障害の少女が、特別な手術を必要としているとき救援の手を差し伸べたのは、地元の米国のシラキュースRCでした。1913年のことでした。ロータリー初期の頃のこのクラブの努力が障害者の援助というロータリー・クラブの長い伝統になりました。

同じ頃、米国のオハイオ州のエドガー“ダディ”アレンや、その他のロータリアンの活動が契機となって、同様なプロジェクトが企てられ、それが発展してトレド(オハイオ州)身体障害児童協会となり、これがさらに、各種の予防とリハビリのための全米イースター・シール協会という大きな組織に発展しました。

ロータリアンは、リハビリテーション・インターナショナルの発展にも貢献しました。リハビリテーション・インターナショナルは、1990年代初期までに、89カ国に150以上の団体を擁し、世界の5億人以上の障害者を援助してきました。

前述の二つの団体は大成功を収めていますが、ロータリーのこの分野での最大の貢献は、障害者の権利とニーズを絶えず擁護してきたことです。ロータリアンは、地域社会において一般の人々の理解を深め、公共交通機関や公共の建物を障害者に利用しやすいものにし、地元の病院に車椅子やエレベーターのような設備を提供し、また遊園地に障害者も楽しめるレクリエーション施設を設置しました。

ロータリアンは、また、身障者に社交の場を提供することにも努めてきました。ベルギーのザベンテムRCは、近隣の診療所の多発性硬化症患者が、陽光あふれるカナリー諸島最大のテネリフェ島で付き添いと一緒に1週間の休暇を楽しめるよう手配しました。

身体障害児と同世代の健常者が一緒に、キャンプで1週間またはそれ以上のレクリエーション活動を楽しむハンディキャンプを開催するクラブや地区もあります。1978年に最初のハンディキャンプが、ノルウェーのオスロで開催されて以来、このプログラムは、世界各地のロータリー・クラブで取り入れられました。

ロータリー・クラブは、シラキュースの初期ロータリアンの例に習い、障害の原因の除去と障害を軽減する活動を組み合わせ、身障者の悩みを医療面から解決することに努めてきました。

まず、その第1番目に挙げるのは、ロータリーのポリオ・プラス・プログラムです。ロータリアンは、このプログラムを通じて、ポリオを撲滅するために世界保健機関、ユニセフその他と協力しています。1980年代半ばに開始され、世界各地のロータリー・クラブが、障害を残す疾病から世界の児童を守るために、大規模な予防接種活動の資金米貨2億4千7百万ドル以上を集めました。クラブは、予防接種キャンプを計画し、実施しました。ワクチンの輸送と冷凍保存に尽力し、それぞれの地域社会で予防接種キャンペーンを展開しました。現在もポリオ撲滅の資金援助が熱心に続けられています。ポリオを西暦2005年までに撲滅することが、ロータリーの100周年行事としての最優先事項の一つです。

このように、ロータリー・クラブは、ポリオ・プラスの成功とその他の疾病の予防接種キャンペーンに大きな貢献をしましたが、他の多くの疾病や疾患を軽減する努力も怠りませんでした。開発途上世界では、多くのクラブが、アイ・キャンプを実施し、医師(多くはロータリアン)が、視覚障害者に光を取り戻すために手術をし、緑内障、白内障その他の眼病と損傷による苦しみを取り除いています。

インドのロータリアンは、管状のポリ塩化ビニールからつくられる低価格のジャイプール・フットという義足の推進に指導的役割を果たし、成功を収めています。クラブは、各地の身障者が、義足を自分に合わせて製作してもらいに来るように、いろいろな場所で特別キャンプを開催してきました。その結果、それまで車椅子で生活していた多くの人が、再び、歩くことができるようになりました。インドのロータリアンは、世界の他の地域がジャイプール・フットを導入するときに、その国で身障者と保健関係者に製作方法を指導するために旅行までしてきたほどです。
身障者について語るとき、米国、ニューヨークのロータリアンによって始められた「命を贈るプログラム」を述べなくては、完璧とはいえません。プログラムの名称が示すように、先天性心臓欠損症で生命が危ぶまれている、世界各地の児童のために米国で心臓外科手術をするプログラムです。1974年に開始した「命を贈るプログラム」は、現在、米国中のロータリー地区と外国に広がり、このプログラムで世界の児童の多くの命が救われました。

20世紀末に近づくにつれて、もう一つの恐ろしい病が世界各地で、人々の生命を奪いました。エイズです。ロータリー・クラブは、エイズの悲惨さを認識し、この疾病の蔓延を防ぐために協力して活動してきました。ロータリー・クラブは、地域社会でエイズへの理解と教育プロジェクトを開始し、HIVウイルスの有無を検査する診療所を開設してきました。さらに、既に感染している人を慰め、末期症状の患者のためのホスピスを援助し、余命を支える看護を提供しています。米国のロスアルトスRC会員は、クラブ会長の子息とクラブの長老会員の1人が、エイズに感染しているのを知り、これが活動の契機になりました。クラブ会員は、悲痛ですが説得力のあるエイズの記録映画を製作し、各方面に配布しました。米国では全国的にテレビ放映され、また世界中の多くのロータリー・クラブで上映されました。その結果、数人のロータリアンの思いやりから始まったことが、他の多くの人々の目指す目的になりました。

21世紀に入っても世界的にはマラリアも大きな問題となっております。その他には貧困による栄養失調とともに失明予防もまた大きな問題です。

青少年と協力

ロータリー・クラブ会員として享受できる機会で最もやりがいのあるものの一つが、地域社会の青少年との緊密な協力です。ロータリアンは、思春期の青少年に力を貸すことから得られる充実感のほかに、若い人のエネルギーといちずな熱意に刺激を受け、自分自身も活力を取り戻し、英気が養われると報告しています。

ロータリーの伝統ある標語「各ロータリアンは青少年の模範」は、半世紀前と同じく今日でも色あせていません。地域社会で市民と事業に携わる人の指導者であるロータリアンは、将来を担う若い人々の模範とならなければなりません。青少年の指導力を伸ばし、市民としての責任感を培うことは、ロータリーの青少年活動の変わらぬ主な目標です。

ロータリー・クラブがこの目標を達成する方法の一つは、年齢14歳から18歳までの青少年のための地域社会または学校を基盤とするインターアクト・クラブ(Interact Club - IAC)を提唱することです。IACは、提唱ロータリー・クラブの顧問ロータリアンにより指導監督されますが、自主自立の組織です。IAC会員は、毎年、少なくとも二つの主要な奉仕プロジェクトを実施しなければなりません。一つは、地域社会に奉仕するプロジェクトで、もう一つは、国際理解を推進するプロジェクトです。最初のIACが、1962年に、米国、フロリダ州のメルボルン高校に設立されて以来、このプログラムは急速に広まりました。2003年までに、世界の114カ国に、9,000以上のIACとインターアクターと呼ばれる21万名の会員を擁するようになりました。

インターアクターは、クラブの各種プロジェクトを通じて、ロータリー・クラブと同様に多くの社会問題に取り組みます。IACは、実際に、労力を提供したり、募金活動に協力したりして、提唱ロータリー・クラブに協力します。高齢者や病人を訪れたり、環境保全プロジェクトを実施したり、同じ世代の人々や同級生に薬物濫用防止を推進したりするインターアクターを世界各地の地域社会で見ることができます。
例えば、米国のエスコンディード高校IACのインターアクターは、学校で再生利用計画を立て、地元の廃棄物業者の協力を得て、地域社会の再生利用運動を開始しました。英国のロング・イートンIAC会員は、目の不自由な人々のために、盲導犬を訓練する資金を集めました。マレーシアのチュン・フゥア・ウェイ・シン高校のインターアクターは、地元にある身障児施設の食堂の壁に多彩な絵を描きました。

IACは、国際理解を深めるために幅広くさまざまな活動を実施しています。これは少し前の話ですが、岐阜県、各務原市の高校のインターアクターが、旱魃(かんばつ)、飢饉、内戦で荒廃したモザンビークに救援物資を送るという市主催の活動に重要な役割を果たしました。インターアクターが、学校で衣類や缶詰などの救援物資を集めました。それから、市内から集まった救援物資を詰めた2,200の段ボール箱をトラックに積み込むのに協力しました。その後、クラブの3名のインターアクターが、市会議員に同行しモザンビークに旅行し、現地で救援活動を行いました。

チェリビンスク列車事故にあった4人のロシアの少年少女が、整形外科手術を受けにスコットランドのアバーディーンに到着して以来、その世話をしたのが、地元のクイーンズ・クロスIACでした。インターアクターは、この若い患者のひとりひとりにスコットランド滞在中のお小遣いとして、50英ポンドを贈り、また、退院後、観光案内をしました。さらに、4人の訪問者全員をIACの名誉会員にしました。

インターアクトは、クラブ役員を務める青少年に指導力を開発する機会を提供しますが、この目的だけで設けられた別のロータリー・プログラムがあります。ロータリー青少年指導者養成プログラム(Rotary Youth Leadership Awards―RYLA)です。ロータリー・クラブでは、その頭文字から成るRYLAの名称のほうがよく知られています。RYLAプログラムは、年齢14歳から30歳までの若い人々に指導力養成セミナーを提供します。参加者が費用を負担することはありません。RYLAの参加者は、年齢に応じた専門知識と指導力の開発について会期3日から10日の研究集会に出席します。よく取り上げられるのは、問題解決、意思決定、権限委譲です。参加者は、活発に交流するだけでなく、さらに主体性のある生き方をする心構えがもてるようになります。セミナーは、ロータリアンが運営しますが、レクリエーションと文化活動も織り込んであり、RYLA出席者に忘れられない豊かな経験を提供することができます。

青少年が、実りある人生を送れるようにするためには、自信と市民精神を育成するだけでは十分ではありません。青少年が思春期の悩みを克服し、過ちを犯さないようにする指導と指針が必要です。

思春期に入ると大抵の若い人々は、間もなく進路を決めなければならないことが気になります。多数の人は、希望の職種を決めることができないままで、大学の専攻を選択しなければならなくなります。こうした若い青少年に広範囲な職業に触れる機会を提供できるのは多種多様な専門職務と事業に携わる人を会員とするロータリー・クラブです。このことを認識して、地元の高校で夕刻の職業相談会や職業見本市を開催しているロータリー・クラブもあります。また、ブラジルの第4420地区のクラブは、地元の高校に配布するために職業情報に関する冊子を発行しました。ロータリアンは、会員のそれぞれの事業所に学生を招き、学生がいつか自分も従事したいと思っている専門職務を自分の目で見る機会を提供しています。

米国のノースイースト・エルパソRCのロータリアンはそれだけにとどまりませんでした。自動車塗装・板金修理店を経営するロータリアンが、地元の学校当局の力を借りて、高校生たちに自分の選んだ職業への関心をもたせるための計画を実施しました。学生たちは、教師とこのロータリアンの指導で、1970年型フォルクスワーゲンを1台、修復しました。学生たちは、この計画でロータリアンの会社にある本物の作業現場で自動車を修理することができました。このロータリアンは、この仕事を完成させるために必要な材料も寄贈しました。

ロータリー・クラブの職業奉仕活動でよく対象になるのは、進路指導の必要な学生や職業訓練の必要な中途退学者や卒業生の青少年です。コロンビアのユンボ・アッロヨホンドRCは、地域社会の若い住民が収入のよい仕事を探しに大都市に流失していくことを憂慮していました。同クラブは、この問題に対して、地元の環境保全に協力しながら建設的な解決策を見つけました。クラブ会員の1人が寄贈した10万平方メートルの土地にロータリアンたちは、ダパ市民/環境保全共同施設を建築しました。ここには、職業訓練校、教会、自然公園が設けられています。職業訓練校は、地元の青少年に、菜園の手入れ、水耕作物、建設、電力の設置方法、潅漑などの技術を教えています。どれも村の収入を増やすものです。お返しに青少年たちは、施設の公園と敷地を整備する責務を担います。

ロータリー・クラブは、職業訓練を提供するだけでなく、青少年の雇用状況の改善方法も探っています。特に現在は世界的な経済変動の時代です。オーストラリアの第9710地区のロータリアンは、全国記者クラブと協力し、会期1日のフォーラムを開催しました。この会議の100名を超える参加者は、オーストラリア首相を含む各界の有力な指導者の話に耳を傾けました。それは、ロータリーと政府が同国の不況による青少年への影響に関する協力方法を語ったものです。後に、オーストラリアの上院委員会が、青少年の長引く高失業率に関する調査を開始したとき、地区のロータリアンは、その審議に参加するよう要請されました。

ロータリーの青少年活動を述べる場合、最も好評なプログラムを含めなくては完結しないでしょう。青少年交換です。事実、多くの一般の人が、地域社会でロータリーと最初に出会うのは、青少年交換なのです。

青少年交換は、年齢15歳から19歳の学生に、海外でホスト・ファミリーと共に暮らし、他国の生活と文化を体験する機会を提供します。交換学生は、通常、1学年間で、数カ所以上のホスト・ファミリーのもとに滞在し、ホスト国の学校に通学します。短期交換の場合、期間は数日から数週間で、通常、学校の休暇を利用して行われます。また身障者を含む場合もあります。

デンマークで1年間過ごした米国の交換学生の手記を次に紹介しますが、これには、青少年交換で、毎年、7千名を超える若い人々の豊かな体験と成長の過程が要約されています。

「ところで…この1年間の私の体験をどのように表現したらよいでしょうか。未知の社会に適応し、母国語以外の言語を習うのは、必ずしも容易なことではありませんでした。しかし、難題を克服できたことも振り返ってみれば、やりがいがありました。よく旅行しました。本当の友達のありがたさを知りました。車がなくても生活できましたし、責任をもって行動するようになりました。食べたことのないものをフォークとナイフで礼儀正しくいただきました…楽しく過ごし、規則を破っても自国へ送還されないですみましたし、体重も増えました。父母の素晴らしさも認識しました。当初、言葉が話せないときにも親しい友達をつくれました。交換学生同士で友達になりました。その友情は生涯続くことでしょう。すべての中で最も重要なことは、自分を見失わない、ということです。本年は、信じられないような思い出が多数できました。デンマークは私の第2の故郷です。ホスト・ファミリーはみんな、私にとって、第2の家族です。私は、すぐデンマークが好きになりました。デンマークを離れるのをとても寂しく思うことでしょう」。

青少年交換の経験は若い学生に測りしれないほど好影響を与えます。しかし、プログラムが本当にためになるのは、国際理解推進の可能性にあります。前述の手記を書いた若い女性は、デンマークで1年間暮らしている間、単なる留学中の高校生ではありませんでした。彼女は、親善使節をも務めたのでした。ホスト・ファミリー、新しい同級生たち、地域社会の人々など、旅行中に出会った人々は、誰もが異なる文化との共通点を多く学び、経験を豊かにしました。この意味で、地域社会が受ける青少年交換のプラス面は、二倍になります。地元の青少年に教育の機会を提供するだけでなく、外国から地域社会に迎える学生と自分たちの文化を分かち合うことができるのです。

ローターアクト

前項では、インターアクト・クラブが提唱ロータリー・クラブと緊密に協力して社会奉仕をしている姿を述べました。しかし、ロータリーの「協同奉仕者」は、インターアクトだけではありません。ロータリーが提唱する他の団体も、世界各地で、広範囲にわたる奉仕プロジェクトを遂行するために熱心に活動しています。

また、21世紀に入ってRIは会員の配偶者や子ども、親族を中心に、インターアクター、RYLA参加者、ロータリー財団の学友と次に述べるローターアクターも含めて、「ロータリー家族」と呼ぶことにしました。クラブはこのロータリー家族と共に奉仕プロジェクトを行なうことが奨められています。

ローターアクトは、ロータリー提唱の年齢18歳から30歳までの青年男女の奉仕クラブです。2003年までに、150カ国に17万3千名を超す会員を擁するまでになりました。

ローターアクト・クラブ(Rotaract Club - RAC)は、インターアクトと同じように、学校か地域社会を基盤にして結成できますが、ローターアクトの結成基盤になる学校は、短期大学や大学です。実際のところ、多くのローターアクターは、既に大学を卒業し、提唱ロータリー・クラブのロータリアンと同様に、現在、家庭を持ち、仕事に励む一方で、奉仕に献身しています。RACには、インターアクトと同様に、顧問ロータリアンがいます。RACは、毎年、地域社会のための奉仕プロジェクトを一つと国際理解を推進するプロジェクトを一つ実施しなければなりません。これが、IACとの共通点です。

インターアクト会員より年齢が上で精神的に一段と大人の会員で構成されるRACは、IACより、一層意欲的なプロジェクトを実施でき、また自立した活動ができます。RACは、奉仕プロジェクトのほかに専門知識開発にも焦点を置き、会員と会員以外の同世代の人々が十分な知識を得たうえで職業選択ができるよう職業選択プログラムを組織しています。これらの点を総合すると、RI理事会が、元ローターアクターを会員として入会させるよう奨励する理由が容易に理解できます。

ローターアクトは、多くの意味で、インターアクトの若い力とロータリーの豊富な経験および献身との間のかけ橋となります。その両方を兼ね併せているので、しばしば、創意にあふれる募金行事を実行できます。イギリスのローターアクターは、社会奉仕の募金のために、滑走路でジェット機のコンコルドを引っ張りました。また、ジブラルタルのローターアクターは、水中で1試合12時間のチェス・マラソンを開催しました。

いく年か前に、オランダのヘームステーデとヒレゴム・リッセの両RACの会員が実施した奇想天外な募金行事の目標は、水上に浮かぶことでした。ローターアクターは、イギリス海峡自転車横断計画を立案し、それを実現してロータリーのポリオ・プラス・キャンペーンのために米貨25万ドルを募金しました。企画力をもつローターアクターは、技術と設計面で企業の協力を得て、自転車36台から成る水陸両用車を建造しました。285社以上が横断に成功したら寄付をすると誓約しました。オランダの王族が、全国向けテレビ放映のときに、水陸両用車に命名をしました。ローターアクターは、ローターアクトの歴史を飾る目的地へペダルを踏んで出航しました。

このオランダのローターアクトのプロジェクトは、RACが、提唱ロータリー・クラブのために協力した一例です。このケースでは、ポリオ・プラスというロータリー・プログラムのために募金しました。しかし、ロータリアンが、ローターアクターの意欲的な目標実現に力を貸すこともよくあります。

イタリアのローターアクターである医師のレディツア・マンズッティさんは、ウガンダの病院で眼科の外科医としてボランティア活動をしているときに、医薬品と医療品が極度に不足していることが分かりました。マンズッティ医師は、ミラノに帰国し、所属のRACに、不足している医療物資の援助を要請しました。この要請には、ローターアクターばかりでなくロータリアンも協力し、イタリア全国の病院と会社から薬品と医療品2.5トン以上が集まりました。地区内ローターアクターは、梱包し、輸送費と保険料を負担しました。医薬品は、ウガンダの首都カンパラに空輸され、そこからトラックで病院に運送されました。1人のローターアクターが思いついたプロジェクトが、結局、多数のRACとロータリー・クラブが参加する大規模な国際的活動に発展しました。

世界には、7,500を超えるRACがあり、会員は、価値あるプロジェクトを実施する他のRACに協力する機会に恵まれています。

例えば、バングラデシュのクルナRACは、生活に必要な水も最低限の保健サービスもない農村地域社会を援助しようと努めていました。RAC会員の工学専攻の学生が、地元で調達できる材料を利用して簡単に、少額の費用でつくれる掘り抜き井戸と便所を、既に、設計していました。不足しているのは、プロジェクトを完成させるための資金だけでした。オーストラリアのロータリー・クラブとRACに援助要請を出すと、サウスオーストラリア州のミッチャムRACが援助を申し出てくれました。

ロータリー地域社会共同隊

以前ならロータリー・クラブが実施していたかもしれない社会奉仕プロジェクトの一部は、1986年から地元のロータリアンの指導で市民グループが、現在、実施しています。ロータリー地域社会共同隊(Rotary Community Corps-RCC)は、地域住民の力を発揮できるよう組織化したもので、住民が自らの手でそれぞれの生活を向上することを目的としています。ロータリー・クラブが中心になり、共同隊を結成し、最初の目標設定に力を貸しますが、RCCの目的は、地域社会を向上させるため、住民に「自主自助」の方法を提供することです。このためロータリー・クラブは、RCCの会員が積極的に共同隊の活動を指導できるように、会員のための指導者講習会を開催します。共同隊に当初の資金を提供することもありますが、RCCの自主自助に重点を置きます。そのためにロータリー・クラブは、共同隊の会員に資金と技術援助の両方を得るためのさまざまな方法を指導します。RCCが、どの程度、自主的に活動できるかに関係なく、提唱ロータリー・クラブは、共同隊の定期的会合に出席したり、プロジェクトの実施地を見学したりして、その進展状況を監督し続けます。これらのロータリー提唱の団体は、農村と都市の両方の地域で、地域発展に貢献していることが実証済みです。

貧困問題が広がるスラム街をもつ多数の先進国都市にはRCCが必要です。米国、フィラデルフィアのスラム街に住んでいる低所得者層の住宅開発の状態を改善するために、フィラデルフィアRCは、RCCを結成しました。団地には、既に、地域共同隊の基盤になる入居者組合がありましたが、目標達成のための指導力と組織力が欠けていました。そこにロータリー・クラブが参加しました。早速、よい変化が見えてきました。RCCは、住民の便宜を図り、外部の業者と契約してクリーニング店を設置し、利益の20パーセントをRCCが受け取れるようにし、その他のプロジェクトのために支出できるようにしました。そのプロジェクトには、フィラデルフィア市住宅団地内に最初のボーイ・スカウト隊を結成することやスラム街の年長の青少年が道を踏みはずすことのないようにバスケット・ボール・チームを結成することなどが含まれていました。

2004年3月末現在、RCCは74カ国に総数5,449あり、推定会員数は125,000名です。
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第5章  国際奉仕
国際奉仕

数ある世界平和と国際理解を推進するNGOの中で、ロータリーほど草の根レベルにおいてその実現のために貢献した団体はありません。それは、ロータリーが国際的な会員のネットワークを持っているからです。

世界中のクラブのネットワークによって、世界のあらゆる地域においてロータリアンが奉仕活動を行っています。一個人では世界を変えることなどできないという常識に反し、ロータリアンは、地域社会のみならず、国境をはるかに越えた地域の人々の生活をも向上させる機会に恵まれており、行動しています。

本章では、ロータリー・クラブが国際奉仕プロジェクトの達成に協力するための様々な方法、さらに世界理解と平和の推進を特に目的としたロータリーのいくつかのプログラムについて紹介します。ロータリアンは、ロータリーの綱領の第4項に掲げられた「奉仕の理想に結ばれた、事業と専門職務に携わる人の世界的親交によって、国際間の理解と親善と平和を推進すること」という目的を大切にしており、これはロータリーの国際奉仕活動の推進力となっています。ロータリーでは、創立記念日の2月23日を国際平和活動の理解を深める日として設定しており、その週は世界理解と平和週間と呼ばれています。

  世界社会奉仕

ロータリー・クラブは、1962年以来、世界社会奉仕(World Community Service―WCS)プログラムの下に、国境を越えて数多くのプロジェクトに着手し、協力してきました。

ある国のロータリー・クラブが、他国のロータリー・クラブのプロジェクトに協力することで、世界社会奉仕が実施されます。協力の発端は、多種多様です。例えば、異なる国の2人のロータリアンが、国際大会で出会い、何げなく会話を始めたことが契機になることもあります。あるいは、クラブが、世界社会奉仕プロジェクト交換にプロジェクトを登録したのが、きっかけかもしれません。

RIウェブ・サイト上の世界社会奉仕プロジェクト交換データベースは、援助を必要とするプロジェクトを実施しようというクラブと、援助を提供しようという海外のクラブを結びつけるものです。
(http://www.rotary.org/applications/WCSproj/japanese/database.html) この反対の方向で始まるWCSプロジェクトもあります。例えば、日本のロータリー・クラブが、中古の診断設備を有効に使ってくれるところがあれば寄贈したいという地元の医療器具業者がいることを知った時、このクラブは、WCSプロジェクト交換データベースのDIN―現物拠出情報ネットワークに登録します。

このプログラムは、参加ロータリー・クラブの間で好評を得ています。援助を受けるロータリー・クラブは、地元で通常調達できる人的、物的資源の限度を超えるプロジェクトに着手できますし、一方、援助を提供するクラブは、世界の他の地域に奉仕の手を差し伸べ、その状況を向上させることができます。このようにして、プロジェクトに参加するクラブはロータリーの国際性をじかに経験する機会に恵まれ、また海外のロータリアンとの緊密な関係をもつことができます。これらのきずなは、また、新たな奉仕の機会に発展するかもしれません。

ロータリー・クラブがWCSプロジェクト交換にプロジェクトを登録するときは、追加の資金、設備・供給品の寄贈とか、専門医、教師、技術者などのボランティアの派遣を求めているのです。

プロジェクト交換への登録の有効期間は2年間です。クラブが登録することができるプロジェクトは、1回に1件だけです。他のクラブの援助を必要とするようなプロジェクトの規模を考えると、クラブは1度に一つのプロジェクトしか実施できない、と考えられているからです。しかし、この規定には二つの例外があります。クラブは、ロータリー地域社会共同隊、ローターアクト・クラブ、インターアクト・クラブに代わって、もう一つプロジェクトを登録することができます。さらに書籍の寄贈についてはもう1件プロジェクトを登録できます。

財団は、WCSのプロジェクトを支援するための補助金をいくつか授与しています。マッチング・グラントは、ロータリー・クラブや地区の国際奉仕プロジェクトにロータリー・クラブと地区の集めた資金に対して同額または半額を支給するものです。個人向け補助金は、国際奉仕プロジェクト開発のための旅費を提供するものです。

2005年の国際ロータリーの100周年を記念して双子クラブプログラムへの参加が奨励されています。2つの異なる国のクラブが国際奉仕のプロジェクトを協同で実施するものです。同じ分野に関心を持っているクラブが双子クラブとなることで奉仕活動が一層推進されます。

世界理解と平和を推進

1921年に、スコットランドのエジンバラで開かれたRI国際大会において、代議員は、ロータリーの綱領を改正し、国際理解と平和の推進を取り入れました。ロータリアンがこれらの問題を検討したのは、これが最初ではありません。米国以外に最初のロータリー・クラブが結成されて10年が過ぎた1921年には、ロータリー・クラブの国際的ネットワークが世界に広がっていました。多分、終わったばかりの第1次世界大戦の記憶が、平和への願いを強くしたのでしょう。

ロータリーの国際的ネットワークはロータリアンに世界の問題に取り組む舞台を提供しました。教育および文化の広範囲にわたる交流を検討するためのロータリーの会合が1944年にロンドンで開かれ、国連教育科学文化機関(UNESCO)の創設へと発展しました。1年後に、50ヵ国の代表が、米国、カリフォルニア州のサンフランシスコに参集し、国連憲章を採択しました。ここに参加した代表団の中には、総勢49人のロータリアンとRI職員がいました。

ロータリーと国連の関係は、それで終わったのではありません。国連の最初の12年間で、5名のロータリアンが国連総会の議長を務めました。ロータリーは現在、国連のいくつかの機関並びに国連の主要機関である経済社会理事会(Economic and Social Council--ECOSOC)のトップクラスの「諮問団体」となっています。

文化交流と教育プログラムは、今でも、国際理解を推進するロータリーの活動の中心となっています。第2次世界大戦後の数年間は、ロータリアンの国際共同委員会が、卓話者やクラブ会員あるいは学生の一行を海外に派遣し、交流を推進しました。この慣行は、フランスとドイツのクラブの交流から始まり、現在では、世界的規模で運営されています。ロータリー財団の国際親善奨学金プログラムは、民間レベルとしては世界最大規模の奨学制度です。毎年約1,000名の財団奨学生が海外で勉学しています。奨学生は、自国の親善使節として行動するよう期待されています。また、財団の研究グループ交換プログラムでは、異なる国のロータリー地区が、互いの文化、国民、諸施設を学べるように、専門職務に携わる人から成るチームを交換しています。一つの地区が相手の地区に研究グループ交換チームを派遣すると、翌年相手の地区のチームを受け入れます。現在世界では約400のチームがこのプログラムに参加しています。

米山記念奨学会は日本最初のロータリークラブの創立に貢献した米山梅吉氏を記念して設立されました。日本のロータリアンの寄付を財源として日本で勉学する留学生約1,000名に奨学金を支給しています。

ロータリー国際理解と平和賞

ロータリアンだけが世界理解を推進するために活動しているわけではありません。RIは、1980年に、他者への超我の奉仕を通じて国際理解、親善、平和を推進した個人または団体を表彰するために、毎年、ロータリー国際理解賞(その後名称を変更し、現在はロータリー国際理解と平和賞)を授与することにしました。受賞者には、ロータリーの奉仕の理想を象徴する炎の形をしたクリスタル像が贈られます。これまでに、ジミー・カーター元米国大統領、緒方貞子元国連難民高等弁務官、ネルソン・マンデラ南アフリカ共和国大統領、ローマ法王等が受賞しています。1993年から、受賞者は、米貨100,000ドルの使途として、平和賞の趣旨に沿った慈善事業を指定することができるようになりました。

ロータリアンは、国際理解が世界平和の実現の重要な要因であると認識しています。従って、ロータリー平和プログラムは、広範なロータリーの平和関連の活動を含んでいます。これらの代表的な活動は、ロータリー平和会議です。

1987年以来、ロータリー平和会議は、世界各地で開催され、政府代表、教育者、宗教界のリーダー、国際的な専門家、また一般の人達が出席しています。会議では、ロータリアンがどうすれば平和を推進できるかに重点を置きつつ、紛争の原因に焦点を当て、紛争の引金となる情勢を改善する方法を探ります。最初の頃、日本の広島市で平和会議が開催されました。広島市は、1945年に原子爆弾で破壊されましたが、現在、平和活動の中心になっています。別の平和会議が、ノルウェーのリレハンメルで1993年冬季オリンピックの前に「児童の平和祭」として、開催されました。ロータリアンは、地元の役人、オリンピック委員会、ユネスコその他と協力し、会期1週間のプログラムを準備しました。このプログラムは、30ヵ国の児童を集め国際理解を推進しました。

ロータリアンが力を入れているもう一つの分野は、紛争解決です。地域社会レベルでは、労資紛争の仲裁で、国際レベルでは、対立する国々や党派を交渉させます。ペルーとエクアドルのロータリー委員会は、150年間の国境紛争を終結させた条約を草案しました。

アイルランド共和国と北アイルランドの両方を含む第1160地区のロータリアンが、「相互理解委員会」を創設しました。委員会の最初の活動の一つは、ベルファストという分断された都市の両陣営を代表する指導者たちを招集し、週末に会議を開くことでした。この会合から、両陣営のロータリアンが協力してこの地域に平和をもたらすための多数のアイディアが提起されました。

より最近では、国際問題研究のために、世界各地の七つのロータリー・センター八つの大学(デューク大学とノースキャロライナ大学で一つのセンター)に「紛争の解決と平和問題研究のためのロータリー・センター」が設置されました。ロータリー財団から奨学金を受けて毎年70人を限度とする社会人が、ロータリー・センターで勉学しています。これらの人は将来、世界平和推進のリーダーとして紛争の解決と国際問題に貢献する職業につくことが期待されています。

創立者のポール・ハリスは、かつてロータリーを「世界平和のミニチュア」と述べました。ロータリーほど平和を願い、又平和が実現されている社会はないでしょう。
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第6章  ロータリーはどこに?
本書では、ロータリー・クラブが地域社会に奉仕し、かつ国際理解と平和の目的を推進するにはどうすればよいかをいろいろな角度から考察してきました。しかし、ロータリーのプログラムは必ずしもクラブのためのものではありません。ロータリアンが、クラブの活動のほかに行う奉仕と親睦のいくつかの機会を考察します。

ロータリー・ボランティア・プログラムがその一つです。このプログラムは、ロータリアンの専門技術を、地元、国内、または国際レベルの奉仕に役立たせるものです。このプログラムを通して、ロータリアンは、自分の専門技術とボランティアとしての熱意を生かす方法を見つけてきました。ボランティアの専門技術がどこで必要とされるかによって地元か海外のいずれかで活動することになります。地球の果ての診療所に行くロータリアンの医師や歯科医もいますし、隣の町に行く人もいます。いずれにせよ満足すべき結果が得られています。

WCSプロジェクト交換情報と現物拠出情報ネットワークが、援助の提供者と援助の受領者を結びつけるのと同じようなことを、ボランティア・プログラムも行います。ボランティアの機会とボランティア希望者のリストは、クラブと地区が記録を整備しています。RIは、国際ボランティア登録リストと国際プロジェクト実施地リストを発行しています。

あるボランティア・ロータリアンは次のように書いています。「ボランティア活動は、やりがいがあり、心が躍り、報われ、やめられなくなります」。ボランティアを経験するとやめられなくなるのは、意義ある奉仕から充実感が得られるためであることは間違いありません。それは1回ボランティアを務めたことのある多くの人が「再登録」していることからも分かります。

世界中のロータリアンが多年にわたり趣味または共通の関心事を楽しんできた世界親睦活動プログラムが国際職業連絡グループと統合されてロータリー親睦活動になりました。

切手収集、ワイン愛好、クラシック・カーとロータリアンの趣味と関心事は、会員の数と同じくらい多種多様です。現在日本のロータリアンが入会している主なグループはアマチュア無線、コンピュータ・ユーザー、フィッシング、ゴルフ、囲碁、音楽、ロータリーの歴史と伝統等です。趣味別親睦活動のメンバーは一緒に、これらの活動を楽しむだけではありません。活動に参加するロータリアンは、ロータリーへの関心を同じように持っていますし、親睦、奉仕、世界理解の推進にも関心をもっています。ですから、ロータリアンの参加するスキー国際親睦グループが、スキー行事の利益をロータリー財団に寄付し、空飛ぶロータリアン親睦グループが、医師や看護婦、医療設備の輸送に協力するのも不思議ではありません。親睦グループを設立するには少なくとも三ヶ国からなる三地区以上のロータリアンが参加しなくてはなりません。

病院経営、金融/銀行、または獣医学など専門職務を同じくするロータリアンの参加する職業別親睦グループは、職業奉仕を大切にしています。メンバーは、専門分野の情報を交換し、専門知識を結集して地域社会や国々で奉仕するだけでなく、専門職務を向上させる機会を得ようとしています。例えば、眼科学国際親睦グループは、開発途上国における眼の手術を議題として専門職務セミナーを開催しました。医師たちは、このセミナーで、各種外科技術について論文を提出するよう要請きれました。議題として、緑内障と白内障の診断と治療、また開発途上国で眼を手術するためのアイ・キャンプの設置に関する情報などが取り上げられました。

世界理解を推進し、ロータリーの国際性を経験するには、ロータリアンが、他国のロータリアンの家屋に滞在することにまさる機会はありません。これは、ロータリー友情交換に家族を同行して参加した多数のロータリアンの一致した意見です。友情交換には、2種類あります。一つはロータリアン個人が相手国のロータリアンの家庭に数日間滞在するもので、家族も同行できます。もう一つは地区対地区のチーム・プログラムで、このプログラムでは4組から6組のロータリアン夫妻が1カ月を超えない期間、海外のロータリー地区内の地域社会を数カ所訪問します。これら2種類のプログラムは好評で、国際理解の推進は、必ずしも、骨の折れる活動とは限りません。ロータリー友情交換についての情報は、RIウェブ・サイトで見ることができます。
http://www.rotary.org/languages/japanese/programs/rfe.html

ロータリーは、まさに、20世紀の申し子です。生まれた年は、20世紀が始まってから5年後で、時代の変遷とともにその影響を受けながら発展してきました。21世紀に入りロータリーは100周年を迎えようとしています。ロータリアンは、職場で、地域社会で、そして世界で奉仕活動を活発に行って100周年を祝います。そしてロータリーは、奉仕の理想の実現に向けて新しい世紀に踏み出します。

私たちが、今日、世界で直面する多くの問題は、将来も残るでしょう。問題のいくつかは、確かに、解決されるでしょうが、新たな問題も、確実に、発生するでしょう。

幸いに、どの世紀にも、人類の状態を向上させたい、人助けのために自分の時間と専門技能を捧げたいと望む人がいました。多分、これから何世紀にもわたり、これらの男女は、ロータリアンと呼ばれることでしょう。


参考文献:ロータリアン必携、手続要覧、ロータリー章典

編集者
RI研修リーダー 黒田 正宏
RI研修リーダー 上野  孝
RI研修リーダー 川尻 政輝
文責
RI日本事務局奉仕室長 大木 光男

作成日 2004年6月1日
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